△ アリビンゲーブ 07
その後、がちがちに固まる私を兵長はいつもの無表情で見ていた。
シャツを自分で脱げと言われ、羞恥で顔を赤くしながらもボタンを外し、言われてるがままに従った。
むず痒さと気恥ずかしさが感情を支配して、まともに兵長の顔を見れない。
脱ぎ終わってもシャツを放せない私の手から有無を言わさずそれを剥ぎ取り、値踏みするかのように体を見られる。
自慢出来るような肉体は持ち合わせていない為、いつ兵長から帰れと言われるか内心待ち続けたが、生憎そんな言葉は聞けなかった。
ただ、
「まぁ、悪くない…。」
と離れた所から言われたが、喜んで良いものか複雑だ。
そのままベッドに横たわるように指示されるが、生まれてから一度も男性経験がない上にそんな要求をされては、もう何をどうすれば良いか分からなかった。
とりあえずはベッドに腰掛けては見るが、彼を誘う様な仕草もするべきなのだろうか、もうお手上げ状態だ。
「へ、兵長…これ以上は…。」
縋る様に彼を見つめると、呆れた様に肩を押された。
放心状態のまま重力に身を任せ、彼のベッドに身を沈める。
上に乗っかる彼を見上げる体制で、息を飲んだ。
そのまま彼が身を寄せたので、ぎゅっと目を閉じて身構えると、予想に反して首元に顔を近づけただけのようだ。
「…?」
すぐに顔を上げた彼の黒髪が首すじをくすぐる。
訓練を終えたばかりで汗臭いはずだ、水を浴びさせて欲しい!
次は何をされるのか気が気ではない私に、彼の口が開いた。
「ふん……まだ甘いな。それに固すぎる。
次回までに直しておけ。」
え?と言葉にはしないながらも表情に出ていたのか、兵長は立ち上がりながら私のシャツとジャケットを投げてよこした。
「今日は終いだと言っている。戻っていい。」
一瞬、ぽかんとするが、ぎろりと睨まれて慌てて身を起こす。
「は、はい!失礼します!」
何だか分からないが、今日は助かった!
そのまま小走りに外へ出ようとすると、ぐいっと腕を掴まれた。
「アホが。服を着ろ。」
…そういえば。
急いでシャツのボタンを閉めてジャケットを羽織り、もう一度断りを入れてから部屋を飛び出た。
窓から見える宿舎を頼りに塔をでるが、夢中で出てきたのでもう一度戻れと言われても戻れない自信がある。
自分の部屋に戻っても心臓はまだ早鐘を打ち、顔に血が登って中々冷めそうに無かった。
やっと先ほどの出来事を反芻出来たのは、宿舎に戻って冷たい水で顔を冷やしたときだった。