△ スチータスII 05
そ、それって…。
胸に温かいものがこみ上げる。
彼は冷たく見えて情に熱い人なので、目に映った命は救おうとするに違いない。
それでも、壁外でここまで私を気にかけてくれるそぶりは今まで感じたことがなかった。
誰より秩序と規則があって組織が成り立つと考えている人だから、自分勝手な行動をするなと私にも言っているくらいなのに。
その規律を自分で破るようなことをするなんて。
「信じられない…」
「私だって信じられないよ、
あのリヴァイがねぇ?
あっ!
あれ、エマの班にいた新人くんじゃない?」
おーい、とハンジが手を振ると彼もこちらに気付き、驚いたように小走りに駆け寄ってくる。
息が上がっているので、訓練の途中だったようだ。
「エマ班長!!怪我はどうですか!?」
「大丈夫だよ!
ごめんね、班長がこんな怪我しちゃって…。皆はその後どう?」
「こっちも何とかやってます、
皆新しい班に異動したんで、バラバラになってしまいましたけど…」
「そっか…」
元々人員が減ってしまう度に班の構成が変わったりしていたけれど、今回は班長が不在になってしまうので大規模な異動があったようだ。
申し訳ない。
私の不手際だ。
「でも俺、兵長の行動に感動しました。」
え?というように私とハンジで同時に顔を上げる。
「あんなに動きが速い人初めて見ました!
これからもっと鍛錬を積んで、俺ももっと強くなります。
それから、兵長みたいに大事な人をちゃんと守れるようになりたいです。
鬼のようにすごかったんですよ!
鬼気迫るというか。
剣がこうやって動いたかと思ったらですね…」
彼はその時のリヴァイの動きを再現してくれたが、次の訓練の集合の合図がかかったので残念そうに去っていった。
彼に手を振りながら見送り、その背中が他の兵士に混じって訓練を再開させる。
「鬼、だって」
ふっと二人して吹き出してしまう。
鬼気迫るリヴァイ。
容易に想像出来てしまうところが逆に怖い。