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 ナカロマ 97

世界が、止まった気がした。


あまりに普通に言うものだから私の方が言葉を失ってしまった。
好き、っていう言葉こそ使ってくれないけど、なんだかそれもリヴァイらしく聞こえる。



「……」



しっかりとリヴァイの口から、リヴァイの言葉でそう聞いたというのにまだ頭では理解出来なかった。


嘘だったらどうしよう。
そ、そんなわけないよね?
こんなときに冗談なんか言わないよね?

…好きって、本当にそういう好き?

今の質問、ちゃんと伝わってた?


それって…わたしと同じ好き?



「……ほ、ほんとう、に好き?」



思わずそう聞き返してしまう。

そんな私を見て、リヴァイは少し目を細めてから背中に回した腕で私の身体を更に引き寄せた。
わたしの髪は重力に従って顔を滑り、額にはさらりとリヴァイの髪がかかる。

あの夜みたいに顔がくっつきそうな程近づいて、周りの風景も、空さえも何も見えなくなる。


見えるのは目の前の彼だけ。


この世界に、リヴァイだけしか見えない。





「……本当だ」





それを聞いて今度こそ私は我慢が出来なかった。

彼の首に腕を回して、支えられている状態のままぎゅっと抱き着く。

それに気付いて背中にあった手がふと肩に移動して抱きしめられた。

彼の香りに包まれて、腕に抱かれて、なんだか溶けてしまいそうだった。
ほっと息をつく。
抱きしめられて初めて息が出来るような心地がした。

体温に包まれて、それだけなのにものすごく気持ちいい。



「…それだけでいいのか?」



耳元でそう聞こえて、
え、と思わず一瞬体を離すと、それを待っていたかのようにぐっとリヴァイの長い睫毛が近づき鼻先が触れ合う。

吐息が混じって、唇の温度さえ感じられそうだった。


「……!」


キス、される、と思った。


それなのに、リヴァイはその触れるか触れないかの場所から動かずに私を見つめて、誘うように首を少しだけ傾ける。

私は手をリヴァイの首辺りに置いたまま、硬直してしまった。


こ、これって…

私からキスしろってこと…!?


キスなんて、

…はじめて、なのに…。


どくっと心臓が大きく跳ねて、
一瞬恥ずかしくて逃げ出したいと思ったのに、あ、と思い直した。

恥ずかしさを超えた向こうに、それ以上の愛しさがあるのを私はもうリヴァイに教えてもらっている。




「……ほら。
早くしねぇと、あいつらが帰ってくるかもしれねぇな…?」




大好きな、心地よくて、でも今は少し意地悪な声が私を誘う。

私はそう微かに動くリヴァイの唇から目が離せずに、彼の胸元に手を当てて、今度こそその熱に引き寄せられるように自分から顔を近づけた。


その唇にほんの軽くだけ、自分の唇が触れる。
緊張して、上手くできているか不安で。
手が、震えた。


薄い皮膚を通して柔らかい体温を感じた次の瞬間、リヴァイの手が素早く後頭部に回って引き寄せられ、更に深く唇が重なった。



「ん……っ!?」



リヴァイ、と名前を呼ぼうとするけど強く体を抱きすくめられてそんな隙さえもない。

一度味わうように長く口付けてから、一瞬だけ離れてまた重なる。
何度も小さく角度を変える唇は、それでも私を離さなかった。


息が、苦しくて。

胸が苦しい。

……でも、たまらなく嬉しい。


抱きしめる腕は強いのに合わさる唇は優しくてどこまでも私を翻弄する。

優しく、でも深く、キスが降ってくる。

苦しくて逃げようとしても離してくれない。
角度を変えるキスの間に、吐息が漏れた。

恥ずかしいのに気持ちいい。

放してほしいのに、離してほしくない。


…キスって、こんなに気持ちいいものなの?


頭が考えることをやめて、体中の神経が痺れていく感覚がした。
いつの間にか無意識にリヴァイの腕を掴んでいた手から、するりと力が抜ける。





好き。


…好き。





支えられていた体から力が抜けたのを見て、リヴァイが少し唇に掛けていた体重を軽くする。
私に息をつかせるように唇が一瞬離れた時、苦しい吐息とともに素直な気持ちが零れた。



「……リ…ヴァ…イ……好、き…」



本当に、それしか私の中には残らなかった。

やっと唇を離した彼はそれを聞いて、満足そうに口角を上げた。



「……ああ。知ってる」



  


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