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 スチータス 03

自分でも認めたくはないが、身体のセンサーが彼の居場所を感じ取ってしまう。


すごーーーーーく悔しいことに、諦め切れていないのが現状だ。


それを証明してしまうのが最近お気に入りのこの場所。

食堂での昼食が終わり、訓練兵団以外の兵士はそれぞれ昼休憩を取ることが許されている。
私は決まってその時間にこの共同給湯室に上がってくる。

いつも大抵何人かの兵士がおり、食後の束の間の休憩時間を楽しんでいる。

三階に位置する給湯室の窓からは訓練場がよく見える。


そこを休憩中に行き来する、リヴァイの姿も…。
彼の姿を目で追ってしまう自分にも呆れてしまうが、見ていたいとまだ思ってしまうのだから仕方ない。

彼との接点は無いに等しいのだから、これくらい許されるよね?

この給湯室に通い始めて2週間ほど経ったある日。
いつものように窓際に座って本を読みながら時折訓練場の様子も窺っていると、リヴァイと兵士が数人がやってきたのが見えた。

いつもリヴァイは一歩外から彼らを見ているのだが、最近はそんなリヴァイを追いかける一人の姿をよく目にする。

小柄で、無邪気で、よく笑うペトラだ。
自身の討伐数はそれほどでもないが、討伐補佐数の伸びは目を見張るものがある。

きっと、実生活でも他人を気遣うことが出来る子なのだろう。
リヴァイは突き放すような言葉を言わない上に、反則じみた優しさを見せる時がある。
言葉はぶっきらぼうで無愛想だが、冷血なわけではないし、人の話もしっかり聞く。
嬉しそうに彼に話しかけるペトラを見ていると、なんだか以前の私に重なった。

憧れだったはずなのにいつのまにかそれ以上に膨らんでいた気持ち。
無邪気に、自分の想いを伝えられたらよかったのに…。

ペトラの行動はつい応援したくなってしまう。
応援したい気持ちと、子供のように彼を取らないでと叫びたい気持ちが入り混じる。


…そうだよね。

彼も、新しい恋の準備が出来ているかもしれないし…
もしかしたら既にそういう人がいるのかもしれない。

知らない誰かと寄り添う彼を勝手に想像してしまう。
胸の奥がじりじりと痛んだ。


今すぐにリヴァイの元に飛んで行って、あの胸に顔をうずめたい。
彼は優しいから、いつかみたいに抱きしめてくれるんじゃないかって甘えた考えを持ってしまう。

たとえ彼が私のことを何とも思っていないとしても…。


こんな考えを何度めぐらせたことだろう。

昇格を言い渡され、責任が増えていくにつれて時々押し潰れそうになる。
優先すべきは作戦の実行。

部下が倒れても一人ひとり看取る事も出来ない。
作戦の成功が人類の未来へ繋がると信じて…。

自分を組織の中の小さな駒だと考え、どの行動が一番適切か見極める必要があった。
あの時以上に私達には地位があり、部下が増え、背負うものが多くなった。
自分の行動がどんなに周りに影響するかなんて、痛いくらい分かっている。


分かっていたはずなのに。
惚れた腫れたで行動なんてしてはいけない。

手遅れになる前に踏ん切りをつけなければ。

ここにも、もう来ないことにしよう。


自分にそう言い聞かせ、給湯室を後にした。









ーーーリヴァイがこちらを見上げているなんて気づきもせずに。



  


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