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 ナカロマ 69

「お前は助かって今こうして生きてる…いいじゃねぇか、それで。」

「……よくない」


全然、良くない。

なんであの日は兵団の規律に従わなかったのか。

どうしてわざわざあんなところまで来て助けてくれたのか。

なんで、優しくしてくれるの、とか。


何をどう考えても答えは出ない。



「……そんなに理由が必要か?
お前には少し手間が掛かるってだけだろう」

「……っ」



手間、って。

やっぱり迷惑だったと思ってるの?

気付かないようなところでいつも彼が先回りして助けてくれることがあった。
そういえば、細かいことを含めればそれはエルヴィンの家にいる時からだ。


昔から。

助けてくれるのは…義務感からなの?


リヴァイにとって、わたしって一体どんな存在?

そんなにしてまで、助ける価値はあった…?



「……リヴァイはなんで、いつも私を助けてくれるの?」



それだけでいいから。

私の存在価値だけでいいから、教えてほしい。


手を伸ばせば、触れられる場所にいて。
リヴァイの目には今は私しか映っていない。

今だけは、誰よりも、こんなに近くにいるのに。


一番知りたい彼の気持ちが一番見えない。
一番欲しい言葉が聞けない。


睨んでいるようにも見える彼の瞳からは彼の感情は測りきれない。

それを言わないのは、言ったらどちらかの不利になるから?
…私の不利になる?

それって、言ったら私が傷つくのが分かってるってこと?



「……………」



なんで、なにも言ってくれないの?

いつもいつも、私ばっかりリヴァイのこと考えて。


こんなにそばにいたいと思ってるのは……私だけ。



「…もう、いい」


「…あ?」



もう、やだ。

もうこうやって何度も何度も同じ事繰り返して、その度にこんなに苦しくなる。

こんなの、もう終わらせなきゃ。



「私、リヴァイのそばを離れてみる」



リヴァイは優しいから私のことも守ってくれようとしてくれるけど、
それって私にも、ペトラさんにも残酷だと思う。



「助けに来てくれて…本当に嬉しかった。ありがとう」



でも、二人でいるところをこれ以上見たくない。

仲良いところも見たくなんかない。


…もしあの時、リヴァイが一人で来てくれてたら……なんて、最低だ、わたし。


諦めきれなくなるから優しくしないでほしい。

あんなにそばにいたいと願ったのに。
今は……そばにいたくない。

離れてきっぱり忘れられるなら、それまで会いたくない。



「もう、リヴァイには絶対に迷惑をかけないようにするから…
今度は外で何があっても助けに来なくていい。
自分でなんとかするから」


「……なんでそうなる」



睨むように見つめてくるリヴァイの視線に怯むけど、負けずに視線を返す。


「俺はお前に外には行くなと言ったよな?
自分の身も守れねぇくせに、心配と手間ばかり掛けるな」


「それはっ、」



思わず言葉を飲み込んだ。


分かってる。

悔しいくらい分かってるよ。


リヴァイが正しい。
いつも彼の方が正しい。







それでも、ただ聞き分け良くなんかできない…!


自分は、好き勝手してるくせに。

自分にはペトラさんがいるくせに、私にこうやって指図して。

なんで私ばっかり言われなきゃいけないの?


なんで、私ばっかり…、


自分を抑えられない。

言い合いなんかしたくないのに。
こんなこと言いたいんじゃない。

泣きたくなんか、ない。




……いつもみたいに、ただ抱き着けられたら。


「もう、これからは私のこと気にしなくていい。
もし今度こそ壁外で死ぬことになったとしても、リヴァイには関係ない。
死んでも後悔しないから…!」


向き合っていられなくなって、入り口に向かおうとリヴァイから顔を背けた。



感情が昂ぶってこれ以上は隠しきれない。

喉のあたりが熱くなって自分が怒っているのか、泣いているのか分からなくなった。



  


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