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 ナカロマ 54

途切れかけた意識の端で、ぐい、と誰かに半ば強引に肩を引かれた気がした。

痛、い…。
なに…?
巨人?

もしかして、気を失ってる間に地面に落ちたのかな。

腕の傷が鋭く痛み、肩が、背中が軋む。
気分が悪い。
頭が、ぐらぐら、ふわふわする。

痛い、動かさないで…。
食べるなら、食べていいから。

瞼を開けようにも力が入らない。
宙に浮いた様な感覚の中で、浅い呼吸を繰り返した。

その誰かの手が頬に触れる。
……?
巨人じゃ、ない?
人間?

わたし以外にも誰か逃げて来てた?
よかった。
それならよかった、けど。

触ら、ないで。
わたしのことは放っておいてくれていいから。


そう言いたいのに体が重い。

瞼も手も鉛のように重くて、持ち上げられない。
その手が少し乱暴にシャツのボタンに掛かるのを感じて、辛うじて声を振り絞った。


や、やめて。
やだ。
何でシャツに…?


触られるのは好きじゃない。

リヴァイじゃないと…、



「………や…だ…」



それを聞いて、その手の持ち主は一瞬手を止めて、もう一度優しく頬に手を当てた。

なんだか、少し空気が和らいだようだった。



……?

なに…?



不思議に思って苦しい息の中で薄く目を開くと、ぼんやりとした視界の中で困ったように少し笑うリヴァイが見えた。




「……俺だ、馬鹿…」




思わず重い瞼を瞬きさせる。



「………リ…?」



リヴァイ?


夢?


…本物?



来てくれた…?

ここまで、来てくれたの?

どうやってここが分かったの……?



名前を呼ぼうとしたけれど、彼の体温が近づいて、暖かい腕が私を強く抱き締めた。

正常に機能しない私の頭は何が起こったのか考えることが出来なくて、
背中に回されたリヴァイの力強い腕をどこか遠い夢のように感じていた。

聞きたいことはたくさんあるはずなのに、どれも言葉にはならない。

すぐに彼の体は離れて、頬に添えられた手が何度か撫でるように優しく拭い、口元に移動した。

その指が弧を描くようにくちびるをなぞる。




「……脱水症状が出てる。水を飲め」




……みず?



そういえば、全然水飲んでなかったかも……

でも、力が入らない…


朦朧とした意識のなか、リヴァイが取り出した革の水筒を目の端で捉えたのを最後に、全身の力が抜けた。






真っ暗な意識の崖を落ちていくこの感じ。

…それなのに、不思議。

さっきまで確かにあきらめていたはずなのに。

夢の続きでもいい。



ここが壁外だとか、巨人だとか、そんなことリヴァイのそばでは何の不安にもならないから…。



  


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