△ ナカロマ 08
「ここ?」
「…そうだ。」
案内された部屋は角部屋で、かなりの広さがあった。
憲兵の宿舎と同じように二段ベッドは置かれているが、相部屋のはずなのに室内には他の荷物も何もない。
「私一人?同室の子はいないの?」
「ああ、人数が合わなかったらしい。そのうち新しく部屋の振り分けが行われるそうだが、それまでここはお前一人だ。」
…ふぅん。
「私だけの部屋なんて…なんだか久しぶり。」
ぐるりと部屋を見渡して、何もない殺風景さに新しい生活が始まることを実感する。
…浴室は無いのか。
共同ならば、一階あたりだろうか?
色々と確認しなくては。
部屋の入り口でリヴァイはドア枠にもたれ、そんな私を眺めている。
「あ、リヴァイ、ここまでどうもありがとう!
忙しいんでしょ?あとは自分で色々施設内を見て回るよ」
「…そうか。キースは訓練場にいる。さっきの廊下から見えた場所だ」
「分かった!ありがとうね」
荷物を二段ベッドの下段に下ろすと、寝具が何もないことに気が付いた。
シーツと、枕と…。
タオルも必要だ。
リネン室はどの辺りにあるだろう。
見知らぬ場所を歩くのは探検のようで、嫌いじゃない。
「エマ」
「え?」
振り返ると、リヴァイはまだそこにいた。
「リネン室はこの階にある。浴室と簡易キッチンは各階に備え付けてあるからな」
独り言のようにそう言うと、一瞬私を見つめてから今度こそ廊下へと歩き出した。
…彼も、昔と変わっていない。
私の考えはそんなに短絡的なの?
目的地の場所を具体的に言うのではなく、階数だけ言うあたりにも全て見通されているようで無ず痒くなる。
でも。
やっぱり、良くも悪くも変わっていない。
私が一番聞きたいことを、あなたは分かっていない。
コツ、と廊下を遠ざかる足音に居ても立っても居られず、その後を追いかけた。
「…リヴァイ!」
廊下に出て呼び止めると、彼はぴた、と歩みを止めて振り返った。
横顔も綺麗なんだよなぁ…、
ではなくて!
「…どうした」
「あの…」
これから聞こうとしていたことにとくん、と胸が鳴る。
絶対、変な風に思われる。
やめておく?
でも、今聞かなかったら私きっと後悔する。
…聞いちゃえ!
「リヴァイの部屋…は、どこにあるの?」