短編集 | ナノ


限定で5つのお題 05

5.限定って、トクベツ


手を伸ばす。

そっと相手の手に触れる。

すると即座に強い力で握られる。指が絡まり、離れなくなる。

驚いて彼を見上げると、真紅の瞳がいたずらっこのように細められている。

「どうしたの?」

そう尋ねる彼、秋瀬くんはひどく楽しそうな様子。
困惑するわたしを見るのがそんなに面白いのかな?
そう考えると恥ずかしくなって、秋瀬くんを直視できなくなった。
―だけどこっそり、握られた手に力を込めたのだった。

つい1週間前までは、声をかけるだけで精いっぱいだったのに。
今ではこうやって触れあうことが当然であるような、そんな状態。

クラスメイトじゃできないこと。

友達じゃ、親友でもできないこと。

恋人じゃないとできないこと。それが純粋にうれしくて。


「…何がそんなにうれしいんだい?」

「えっ?そんな顔してる?」

「してるしてる。自覚なかった?」

「全然わかんなかった…」


でも仕方ないよね?

だってわたしはあなたの恋人になれたんだから。
ずっとずっと大好きだったあなたのトクベツになれたんだから。
こんなにうれしいことはないよ?


「そんな君も、僕は好きだけどね」


そんな言葉をかけられるのはわたしだけ。


「わたしは秋瀬くんのことがだいすきだよ」


わたしのこの感情は、貴方限定のトクベツだよ。




ブランシュネージュ


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