短編集 | ナノ


守って。5題 01

   




 どんなことにも当てはまることだと思うけど、「秘密の共有」は相互の関係をより密接に、それでいて強固なものへと変えてしまう、魔法のようなものだと、思う。

誰にも言えない。

どこにも言えない。

お互いの胸のうちに秘めておかなければならない。


そんなスリリングで、それでいて酷く背徳的な、甘いあまい麻薬のようなもの。



―…それが、二人の秘密。




「来須課長」

もう帰られるんですか?と、小さく問いかけてみる。
わたしに背中を向けて、煙草をくゆらせる上司は、所在無さげにあぁ、と短く呟いた。


「流石に何日もこうだと、な」


少々よれた背広に腕を通し、まるで何事もなかったかのようにネクタイを締める。
そんな動作ひとつひとつが、愛おしい。


「…かちょう…」


これはただの我儘。こどもっぽい、我儘なだけ、と言い聞かせ、彼の唇を己のそれでふさぐ。
勿論、それだけでは終わらない。


「…ストップ、だ。もう帰るんだからな」

「厳しいですね」

「当たり前だ。なにせ…」



バレたらお互い、終わりだからな?



―同じ言葉。

視線がぶつかって、なんだかおかしくなって噴き出した。


そう、これはわたしと彼の、たったひとつの秘密。

割り切った関係。これ以上は踏み込まない。



    ―…もう一つの秘密はわたしの胸の中



Fortune Fate





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来須課長好きですアニメ見て好きになりました。
一見何のためらいもなく不/倫ネタを書いたように思えますが良心の呵責がですね、それはもうすごかったです


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