短編集 | ナノ


君と休日3題 03

君と休日3題

 



松が死んでから、俺がたい焼き屋の経営をおこなっている。

屋台だからあまり儲からないように思う奴が居るかもしれないが。これが中々いい数字をたたき出してくれる。
それというもの、味に関してはそんじゃそこらの店で売られているものより良い自信はあったし。

なにより客によって値段を調整するという、一見すれば詐欺ともとれるような松の戦略があってこその結果だと思っている。


あまり俺自身にするべきことがないから、基本的には毎日屋台のほうに行ってたい焼きと戯れているわけなんだが。



今日は違う。



今日は、とても天気がいいから。気まぐれにアイツと一緒に出かけることにしたのだ。


行き先は全然考えてはいないんだが。俺の隣で歩く彼女がとても満足げに微笑んでいるから、それでいーのかなとか思ったりしている。




「アキラ、風が気持ちいいねー」



真っ白な日傘を差しながら彼女が言う。
陽光がとても心地いいのだが、やはり紫外線とやらは気になるようで。先日妙子から譲ってもらったらしい日傘を愛用している。


「傘、こないだみたく飛ばされねーように気をつけろよ?」

「むぅ、大丈夫だもん!二回目はないもん!」


むぅ、という返し方をされると。ルクレチアなる世界で遭遇したあの忍ぶ気の無い忍者を思い出すが、それは置いといて。

俺のちょっとした軽口にも一々可愛らしい反応をしてくる彼女がとても愛しい。



「ねぇねぇこれから何処に行くの?」


もっともな質問だ。だけど別にどこだっていいだろ?

そういうとカッコいいが、要は何も考えていないのがモロバレなので、心の中だけでそう呟く。



彼女の質問に俺はにやりとした笑みで応え、教えてやんねーよ!と少々意地悪少年のようにそう返してやった。
酷く真面目な彼女はぷんぷんと怒っていたが、きっと俺の心中なぞ分かっているんだろう。

行く当ても無く、ただただ彼女と一緒に歩いている、その行為自体に意味が存在しているのだということを。


     LAL/アキラ


Fortune Fate


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アキラ相手だとほのぼのさせたくなります。
     2012.02.09

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