短編集 | ナノ


導かれて重なって

これの続き
※R18ですのでご注意ください



バートさんに促されるままベッドに腰を下ろすと、すぐさま視界が反転する。
次の瞬間、目の前には穏やかに微笑むバートさんと目が合って。
そこでようやく自分が彼に押し倒されていると気づいた。


喫茶店のマスターとしての姿をどうしてもよく目にするうえ、家でもほとんどお店と同じ服装のことが多いからか
部屋着姿のバートさんは凄く貴重で、それでいてかっこよくてしょうがなかった。

淡いグレーのコットンシャツに同じ素材のロングパンツ。
シャツも仕事の時みたいに一番上までしっかり閉じているわけじゃない。

上から3ツ目ぐらいまでを開き、ちらりと見える鎖骨と胸板がセクシーで。
自分よりも一回りほど年上の男性から漂う色香ってこんなにすごいんだと再認識させられた。


「そんなに見つめられると少し恥ずかしいな…。

 ……それとも、もう我慢もできないか?」


「――ッ…!!」


また、耳元で囁かれる。意地悪な言葉。

さっきからぞくぞくが止まらない。
何回してもらっても慣れない。大好きなバートさんの声。

まだ特にどこも触られている訳じゃないけど、耳朶にかかる吐息やため息混じりの囁きだけなのに。
それだけなのに、間違いなくわたしは興奮して、ドキドキしてる。

…多分、こうして行為に及ぶのが久しぶりだっていうことと。わたしは思っていた以上に耳が弱いんだということ。この2つが大きい。


実際に唇は触れていないのに、バートさんはわたしの耳元でリップ音混じりに甘い言葉を紡ぎ続ける。
さっきまで聞いていた音声とされていることは似ているのに、全然違う。

バートさんにされているというその事実がわたしをどうしようもないほと煽り、興奮させていた。


「名、さっきから凄く声が出ているよ。…そんなに、イイんですか?」


一瞬耳たぶに熱を感じる。一拍おいて、舐められたことに気づく。
接触はほんの一瞬だったのに、全身に電流が走ったみたいにわたしは震えた。
こんな馬鹿みたいに感じまくるなんて、恥ずかしい…凄くはしたない女みたい。

でも、そう思われてももう構わない。早くもっと刺激を与えて欲しい…。


「―――、は  い…。そうです、凄く……きもち、いぃ……

 でももっと、あなたに……バートさんに からだ 、 触ってほし…くて…!」


コットンシャツの前身頃を軽く掴んで、掠れた声で懇願する。
勿論恥ずかしさはある。ものすごくある。我ながらこんなお願い、よく言葉にする事ができたとも思えた。

一度紡いだ言葉は、まるで堤防が決壊したみたく一気に溢れてきて。今まで言いたかったけど我慢していた感情が全て流れ出てきた。
バートさんはカフェ経営とF-ZEROレーサー、二足の草鞋で忙しいことは重々承知していること。
だけどもっとこうして触れて、抱かれて、キスをして、エッチもしたかったこと。
さっきの音声は友人からの勧めで何気なしに再生したこと。すぐ停止すればよかったのにできなかったのは、バートさんにされたらどんんなにイイだろうと思ってしまったからだということ。


「こんな…バートさんのこと、大好きなのに…。恋人だって、言ってくれたのに、ちゃんと気持ちを伝えなくて、ごめんなさい…。

 色々考えすぎて、こんがらがって、……わがままを言って困らせたり、嫌われたくなかったんです……

 ほんとうに………ごめんなさい……でも、バートさんのこと だいすきなんです…」


「名……」


バートさんはわたしが言葉を紡いでいる間、それを遮ることなくずっと黙って聞いていてくれた。

思いの丈を全て吐き出すと、彼はまっすぐわたしを見つめ愛しそうに名前を呼んでくれる。
頭をかき抱くように腕をいれて、ぎゅっと力を込められた。

バートさんの首元にちょうど埋まるような形になって、大人の男性の香りが鼻腔をくすぐる。


「やっぱり…我慢をさせていたんだね。私こそすまない 寂しかっただろう


 だけど、そうだとしても…ああいった音声に頼られるのは、少し、妬けるな」


「んぅ…っちゅ……はぁ…っ、  ば、 バートさ…」

「っは……構わないでしょう? キスだって、沢山シたかったのでは?」


「―――、そ  そ、うです、けど……」


「私だって 名とこうして、触れ合いたかったんだからな」


後頭部に回されていた両手が片方になり、反対の手はするするとわたしの体をゆっくりと撫でていく。
胸、腰、太もも、そしてまたゆっくり上にあがって…ルームウェアのショートパンツをゆっくりずらされる。

特に触れられてもいなかったのに、やっぱり下着の中はわたしの厭らしい蜜で溢れていて。
クロッチ部分をを軽く指で押されただけでぐちぐちというだらしのない水音が室内に響く。


「……本当に、凄いな…私はそんなに、君に触れていないのにな」


愛撫らしい愛撫なんてされてない。されていたことといえば、ずっと耳元で囁いてもらったぐらい。

それだけでこんなに溢れてくるなんて。自分でも驚いてる。




「こんなに濡れているのなら、 もう  いいですか?」




ウィスパーボイスで取られる確認。
だけどこれは拒否権のない質問だということは雰囲気で感じ取れる。

無言でゆっくり頷いて、彼を受け入れる体勢を取る。
腰を少し浮かせると バートさんは満足そうに目を細めて、最早意味を成さないわたしのショーツを剥ぎ取った。

一番恥ずかしい部分が外気に晒されて、ひんやりする。


蜜壷に指があてがわれて、ぐぷぐぷと音を立てながら彼の指が沈んでいく。


「あっ、…んぅ……ばーと、さ  んっ」


「まだ、指1本しか入ってないのに、こんなにあふれて…

 増やしても 構わないね?」


「――っんうっ、あ、 はい  って…る……あぁ……」



「…もう1本増やしても  大丈夫そうだ……」


「 ばーと、さ……  いや、です……
 指じゃ、なくて   ……きて ください…」



思わずでてきたのは行為を強請る言葉。
だってしょうがないの。もっと、バートさんのことを感じたくて我慢できないもん。



「おねだりが、少し上手になりましたね」



嬉しそうに彼は微笑んで、慣れた手つきで彼自身をあてがい、一気に奥まで貫いた。

形容しがたい圧迫感と全身に走る甘い刺激。
一瞬呼吸をすることができなくて、思わずバートさんの首にしがみつく。


あそこが、ひくひくしてるのがわかる。
あぁ 今 わたし、イってるんだ―…




「挿入されただけで、…イってしまうなんて……はぁ……厭らしい人だ…」



子宮の一番奥をこつんと軽く突いて、耳元で彼は囁く。



「んっ はぁ…あんっ、 だ…だってぇ……はぅっ

 バートさんと、えっち……久しぶりで……んっ…  きもちよすぎる…んです …っ   !


 …バートさん 気持ちよく、なってくれて…ますか…? んあっ…あぅ……

 もっと、  もっと… よく、なってください…っ」



一緒に気持ちよくなって、一緒に上り詰めたい。
そう思いながら、ゆっくりと彼の頬を撫でる。


バートさんは一瞬驚いたように目を見開いて。
ぽつりと、優しくできないよとつぶいた。

その言葉に返答するより早く最奥にいた自身を引き抜き、また勢いよく押し込んでくる。
さっきよりもスピードがあるからか、圧迫感が違う。

でも快感の方が大きくて、もうたまらない。


わたしは馬鹿みたいに喘いで、バートさんの唇を貪る。

体のあちこちから汗が吹き出て、シャワーを済ませたのにじっとりとする。
でもそんなこと関係ない。

バートさんもわたしに応えてくれるように啄み、舌を絡めてくる。
うっすら目を開けてみると、普段みせるあの大人の余裕はどこへやら。

ギラギラした目つきでわたしのことを求めてくれる1人の男がそこにいた。


言うまでもなくその姿もかっこよくて、全身が震えてしまう。

もちろん。バートさんを受け入れているソコも収縮してしまったようで。
彼は短く息を吐いて、自身を素早く抜いた。

同時に下腹部に生暖かい液体を感じて、反射的に指を伸ばす。


特有の臭いを放つ、真っ白な液体がべったりとかけられていた。




「……っは……はぁー……  いっぱい、  でましたね」



力なく微笑むと、彼もまた形容しがたい笑みで答えた。










+++   +++   +++




『…君が、ここに来てくれるのをずっと待っていたよ。
 さぁ。私の腕においで、抱きしめてあげよう』



「それにしても、確かに。どこか私に似た声質のようだ」


「うぅ…勘弁してくださいバートさん…」


汗と体液にまみれた体をお互いシャワーで流して、わたしは今彼の寝室にいる。

…わたしのベッドは、その……いっぱい濡れてしまったから、眠れそうになくて…。


わたしに腕枕をしながら、バートさんは引き金にもなった件の動画音声を再生している。
こんなの、男の人と一緒に聞くなんて一種のいじめだと思う。だけど強く抗議することもできず、思わず両手で顔を覆った。



「そんなに恥ずかしがらないで。
 でも…そうだなぁ、これは何かに使えるかもしれないな」


例えば、私の前でこれを聞きながら自慰行為をしてもらうのも。唆るものがある。



そう言ってバートさんは笑う。

あぁ…きっと近いうちに実行されるんだ。
そう直感したけど、なぜだかマイナスの気持ちはおこらなくて。

むしろ、早くシてみたい。そんなことを思ってしまった。



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口調で悩まされました。
公式見解であるわけじゃないんですが、私の中で
仕事中は敬語 オフではフランクな口調
ということにしました。

2017.08.08


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