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Snの援護


最近よく話す女の子がいる。
ナデシコの食堂で働く子なんだが、これがまあ、あまり周りにいなかったタイプで。
これぞ女の子って感じに微笑む可愛らしい子なんだ。戦場に咲いた一輪の花って奴?

同じようなことを考えている奴は他にもいて、意外とライバルが多い。
失敗したが、クルツさんもしっかりデートに誘っていたからな。
存外ガードの固い子で、雑談する分にはいくらでもという感じなんだが
どこかへ出かけようと誘うと躱されちまう。

女の子同士ではよく一緒にいるみたいだが…こればっかりは仕方ねぇ。
…いや、1人例外がいたな。錫石宏ことチビだ。
恐らくだがあいつが常盤津さんと一番仲良くしてる男だろうな。
なにせお互いを名前で呼び合う仲みてぇだし。…全く羨ましい。


「なーに険しい顔してんだよお天気屋。早く食わねぇと料理冷めちまうぞ?
 今日のは紫苑ちゃんが作ったらしいのに勿体ねぇ。いらないならもらっちゃうぜ?」

目の前に座るチビはケラケラ笑いながら俺の皿を狙ってくる。

「うるせぇチビ、お前にくれてやる料理はひと品もねえよ」
「ちぇーケチ!それなら温かいうちに食えよな、せっかく作った紫苑ちゃんに失礼じゃねえか」
「…うるせー」

悔しいがチビの言うとおりだ。アイツの言うことが正しい。
それでもやっぱり面白くないんだなこれが。
…これ以上はやめだ、男の嫉妬なんて醜いだけだ。
胸の内に沸いた黒い感情を飲み込むように常盤津さんの作った料理をかきこむ。

一気に完食してカラになった食器を戻す。
「常盤津さんごっそさん、今日も美味かったよ」
「どういたしまして黒鋼さん。そう言って貰えて嬉しいです」
にこりと微笑みながら常盤津さんがトレイを受け取ってくれる。

あー…かわいい。癒されるぜ…でも俺にだけっていうわけじゃないからそこは思い上がらない。

彼女の笑顔を噛み締めつつ踵を返…そうとした瞬間、手のひらにクシャリとしたものを感じた。
咄嗟に振り向いて常盤津さんを見ると、心なしか頬を赤くしながらぱくぱくと何かを訴えている。

『あとでみてください』

渡された小さなメモ用紙の感触と彼女のその仕草が凄く嬉しく思えて、
食堂をでて。誰も見てないことを確認して思わずガッツポーズを取ってしまった。






「その様子じゃ上手く渡せたみたいだね、紫苑ちゃん」

同じチームの黒鋼が食堂を出たあと、チビこと錫石宏はまだ頬を染めたままの紫苑にそう話しかけた。
彼女は嬉しそうに目を細め、「宏くんのおかげだよ」と微笑んだ。
この2人が親しくなったきっかけはとある男。先刻ガッツポーズを決めた黒鋼勇その人である。

かねてより彼に少なからず好意を抱いていた紫苑は、
彼と同じチームで最も話しかけやすい錫石にそのことを相談したのである。
自分より遥かに年下の少年に恋愛相談なんてと始めは躊躇していたようだが
いざ話しをしてみると自分が思っている以上に錫石は周囲の人間関係を把握しており。
『人は見た目だけで判断してはいけない』ということを紫苑は再認識したのだ。

ともかく錫石宏という協力者を手に入れた紫苑であったが、
意中の相手を前にすると同じように話しかけることができなかった。

「はぁ…それにしてもようやく最初の一歩って感じ?やっとじゃねえか」
「だ、だって…いやでも…ちゃんと渡せたもの、いいでしょう?」

先ほど紫苑が手渡したメモには自分の終業時刻と会って話さないかという内容が書かれている。
何度も渡そうとしては躊躇し、手を引き、言葉を自分の中に飲み込んだ。
しかし今日、ようやく大きな一歩を踏み出したのだ。
この日を迎えるまでにどれだけの時間を費やしたのか。それは呆れ返った錫石の表情が物語っていた。

「でも紫苑ちゃん忘れちゃいねえよな?これはあくまで第一歩だってこと。
あのお天気屋と顔つき合わせて話ができねぇと何の意味もないんだぜ?」

まるで幼い子供に言い聞かせるように人差し指を立てて錫石はそう言い放つ。
グウの音も出ない正論に一瞬気圧されつつ、「ガンバリマス」とまるで機械人形のように紫苑は呟いた。

「やれやれ…本当に大丈夫かよ。まぁ、そんなに心配しなくても大丈夫だって紫苑ちゃんなら」

大きなため息をつきながら錫石はそう励まして、くるりと背を向ける。
彼は知っているのだ。紫苑がどれほど不安になったとしても大丈夫だろうと。
何故なら錫石は黒鋼からも似たような話を聞いており、この2人がお互いに好意を抱きあっていることを知っているからだ。


「(まったく…こうやって気を使って立ち回るオイラのことをもっと労って欲しいぜおふたりさんよ)」


そんな軽口を心の中にとどめつつ、錫石宏は奥手な2人の進展を願わずにいられなかった。



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黄金チーフは…多分駄目だ、恋愛関係において上手く立ち回ることはできなさそうだ…
だんまりのアニキは黙っちゃうでしょ…。青銅くんに相談したら真正面からいくやん?
ファーラ姫は恋バナをしているイメージ自体湧きませんでした