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Night Carnival


※18話if もし合コン開催できたら
※ロン毛ーズ選択エンド



連合宇宙歴99年10月25日。今日も今日とて仕事だけど、楽しみにしていることが終業後に控えている。

合コンだ。
数日前、突然同僚から参加してくれないかと誘われ、気乗りしないながらも承諾した。
どんな人が来るのと聞いたら彼女はにやりと微笑みながら、「かなりのイケメンだよ」とそれだけ教えてくれた。

イケメンさんがくるんだ…と自分の中で反芻して、手持ちの中で一番ちゃんとした服に袖を通して出勤した。
気乗りしないなんて嘘。ここ数年彼氏もいなければ異性とお酒を飲む機会も職場の飲み会だけだし。

…だけど前のめりで食いついたら遊んでる、軽薄って思われてしまいそうで。それが怖くて見栄を張った。


昨日打ち合わせた通りの時間に退社して、待ち合わせているお店へ向かう。
道中で今日くる人達がどんな仕事をしてる人なのか尋ねてみた。
ふんわりとした回答しかこなかったけど、宇宙開発関係の仕事をしている人らしい。

宇宙開発!中々凄い職種の方が!!
だけど彼女はそんな人とどうやって知り合ったんだろう?
思ったままに聞くと、どうやらその中の一人とバーで偶然知り合ったらしく。
そのまま連絡先を交換しあい、合コンをしようとなったらしい。

思いつき?!と突っ込もうかと思ったけど、その思いつきがなければこの場にいなかったわけで。
「何がきっかけでこうなるかなんてわからないね」と当たり障りなく返すことに。


「狙いがお互いかぶらないといいね!がんばろ!」
そう息巻く彼女に頷きで答え、店内へ歩を進める。


彼女曰く、男性陣は既に到着しているらしく案内された席へ向かう。
そこにいたのは3人、もう…びっくりするほどかっこいいトリオだった。


「こんばんは。今日は来てくれてありがとう。さ、座って座って」

切れ長の瞳とざっくり胸元の開いたシャツが特徴的な人がそう促してくれる。
彼らと向かい合うように腰を下ろすと、前に座っていた泣きぼくろが素敵な彼がメニューをすっと取り出す。

ありがとうございますと頭を下げると、「気にすんなって」と快活な笑顔。

しばらくすると頼んでいた飲み物も届き、豪華すぎる合コンが始まった。

「お酒もきたし、はじめようか。乾杯!」

切れ長の彼が音頭を取り、グラスを合わせる。
そのまま定番の自己紹介が始まり、切れ長の人がアカツキさん。わたしの前にいるのがノアルさん。
そしてキラキラの金髪が眩しいクルツさん。

よくよく聞いたら3人とも20歳だそうで。もっと年上に見えたからびっくり。


「よく言われるんだ、なんでかなぁ?」

薄い笑みを浮かべてアカツキさんはそう漏らす。
その表情の仕草もどっちもセクシーで、多分そういうところだろうなぁと思いながらお酒を飲み干す。


アルコールが進むにつれ、少しずつ饒舌に…そして心なしか距離も近くなってきた。
テーブル制のお店だけど最初みたく向かい合った座り方じゃない。

なんとなくそれぞれカップルが出来上がってきて。
わたしの隣でお酒を呷る彼をちらりと見つめた。


   ...隣にいるのは?...

 →アカツキさん
 →クルツさん
 →ノアルさん



------------------------------------















   ...Route:AKATSUKI...


「どうしたの紫苑ちゃん、じっと僕のこと見て。

 それとも……見とれちゃった?」

どきりと心臓が跳ねる。今のは、本当に見とれてしまった。
だけどそれを認めてしまうのは恥ずかしかったので、「どうでしょう?」とぼかして誤魔化した。

「恥ずかしがらなくていいのに」

淡く微笑んで、わたしの髪をひと房掬う。さらりと流れ落ちる様を見届け、ふと目線をあげると彼と視線がぶつかる。

「…あ、っ」

「ちゃんと目があったね」

「……ッ!」

ドキドキしすぎてもうおかしくなりそうだったので、お酒に逃げようと思ったのに。
グラスの中身はすっからかんで、少量の氷水を飲み込むことになってしまった。

空なことに気付かないくらい、彼に夢中だったことを気づかされてしまう。


「お酒なくなった?
 …どうする?僕がよく行くバーで飲み直す?」

「で、でも…他のみんなは…」

「関係ないよ。僕は紫苑ちゃんに聴いてるんだけど。どうする?」


そんなふうに尋ねられるとNoとは言えず、ただ無言で頷くことしかできなかった。

アカツキさんはそんなわたしを満足そうに見つめ、席を立つよう促した。
同僚達はもうクルツさん、ノアルさんに夢中なようでわたし達がどうなろうとお構いなしなようだ。
わたし達はそのまま店を後にし、彼に導かれるまま落ち着いたバーへと足を運ぶ。


「ここ、僕のお気に入りなんだ。何飲む?アルコールにする?」
「…ん…そうします。
 あ、でもあまり強くないお酒でお願いできますか?」

「はい、畏まりました」

シルバーブロンドがよく似合うバーテンダーがにこりと微笑み、好みの味や希望を伝えるとカクテル作りに取り掛かってくれた。

「そういえば…」

長い髪を耳にかけて、アカツキさんはわたしへ視線を向ける。

「幹事のコから聞いたけど…紫苑ちゃん、今夜乗り気じゃなかったらしいね。
 …その割にこうして僕についてきてくれたけど…それはどうして?」

彼は口角を上げたまま少し意地悪に尋ねてくる。

「そ…それ、は……………言わなきゃ、ダメですか?」

「駄目
 ……ほら、お酒もきたし。飲みながらでいいから」

そう言ってアカツキさんはわたしの目の前にカクテルを差し出す。
可愛らしいグラスを受け取り、少し口をつける。
見た目通りで飲みやすくフルーティなそのカクテルをゆっくり飲みながら、わたしは覚悟を決めた。
もう、アルコールの力を借りて話してしまうしかない、と。

「……だって、合コンに食いつき気味だったら、…その、
 軽い女だと思われそうで…。そういう風に思われたくないっていうか。
 本当の自分はそんなんじゃないっていうか……」

どんどん言葉の歯切れが悪くなっていく。
それでもうんうん、と適度に頷きながらアカツキさんは聞いてくれた。

「そっか。
 本当は楽しみで楽しみで仕方なかったのに、興味ないフリをしてたんだ。

 …でもさ、紫苑ちゃん。
 こうして僕とふたりっきりになってるんだから、あんまり説得力がないなぁ?」

ぐさりと笑顔でえげつないことを言ってきた。
いや、アカツキさんの言うことは正論なんだけど。わたし自身もそうだなとは思いますが。

合コンをこうやって途中で抜けて、今日出会ったばかりの男の人とバーで飲み直してるなんて。
こう…その後のことを誘っているような行動なのはわたしだってわかってる。

でもそういう、”下心”があって彼の誘いにのったわけじゃない。


「……アカツキさんとお話して、もっともっと知りたくなったからです」


最初のお店で話しているうちに、もっとこの人と話をしたいとそう思うようになった。
自分と違う仕事をしている彼。出てくる話は宇宙にまつわることが多くて、聞いているだけでとてもワクワクした。
時折混じる鋭い毒舌や、的確な言い回しがとても楽しくて、もっと聞いていたいと。

素面じゃこんなこと絶対言えない。
結構アルコールの回ってしまった今だからこうして言葉にすることができたようなもの。

それでも気恥ずかしさがまったくないわけではない。
羞恥心が限界値を超えてしまったので、思わず俯いてしまうと。


「……え?」


…今のは、本当にアカツキさんの声、だよね?
そう疑いたくなるほど呆けた呟きが隣から聞こえてきた。


「………」
「…………」
「……ちょっ、アカツキさん。そんな黙られたら……恥ずかしいじゃないですか……」
「……あ、あぁ、いや………まいったね、どうも」

少し眉を下げて、彼は言葉を選びながらゆっくりと話す。
息をすることも忘れて、わたしは紡がれる内容をただ、待つ。


「 …今日会ったばっかりの男だよ?

 それなのに………
 ……ひょっとして誘ってる?」

「なっ! そ、そそ、そんなわけ、ないじゃないですか!
 普通に、そう、普通に!普通にお話したいって意味で、その……

 さ……誘うなんて……そんなんじゃ……」


「………ははっ!紫苑ちゃん、顔。真っ赤だね!」


さっきの躊躇いがちだった表情はどこへやら。
心の底からおかしそうにアカツキさんは笑う。
…悔しい…お腹抱えて笑ってるからかなりツボに入ったってこと?
わたしは物凄く恥ずかしかったのに…!!

そう思うとなんだかムカムカして、目の前のカクテルに手を伸ばした。


「ああ、ごめんごめん、そんな怒らないでよ。

 ………



 ……紫苑ちゃん。ここは僕が奢るからさ。好きなものを頼みなよ」


「…はい?」


「話、したいんだろ?」


アカツキさんはそう言って笑う。だけどさっきまでの、おもしろおかしくての笑いじゃなくて。
なんていうか、凄く優しくて。あったかい笑顔。
今夜初めてみる彼のその微笑みにまた心臓がうるさくなってしまう。


「あ…アカツキさん……」

「…名前で呼んでよ。
 僕は君のこと、ずっと紫苑ちゃんって呼んでるのに」

「アカ……ううん、その……

 ナガレ……さん……?」



「なんだい、紫苑」


今日一番の甘い声でナガレさんは答えた。
わたしの名前を呼んだだけなのに脳髄が蕩けてしまいそう。

声にならない声をあげ、更に赤くなるわたしを目を細めながら見つめ、ナガレさんはまた笑う。



「紫苑は面白いなあ。ほら、好きなものを頼んで飲むといい。
 
 …さて、何から話そうか?君は何を聞きたい?なんでも答えてやるよ」




こうして、わたしと彼の夜は、ゆっくりと更けていく。







---------------
本当は年齢制限内容になるはずだったんですよ…


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   ...Route : CURZ...


隣で日本酒を浴びるように飲み続けるクルツさんを盗み見ながら、わたしは心の底から『騙された』と思った。
結論から言うと、クルツ・ウェーバーという男はとんでもなく猫をかぶっていたのである。
自己紹介の時は必要最低限のことしか話さなかったのは彼が寡黙な男性だからじゃない。
この、スケベすぎる一面を隠すためだったんだ。

当たり前のように肩を抱き寄せ、わたしの顔を覗き込むようにしてクルツさんは話す。

「あれ、紫苑ちゃん、グラス空いてるよ。
 俺の飲む??おいしいよ??」

「や、大丈夫です、お構いなく……」

距離の詰め方が独特すぎて思わず身をよじって逃げてしまう。
クルツさんはそんなささやかな抵抗も気にすることなく明るく笑い飛ばす。

「紫苑ちゃん冷たいな〜!じゃあ何飲む?
 俺のオススメはこの日本酒かな、甘口で女の子でも飲みやすかったからさ」

「えぇ?…でもそれ、結構強くないですか?」

「大丈夫大丈夫!もし君が酔ったら俺が介抱するよ。
 明日の朝まで、しっかりね」

「…もー、クルツさんったら」

最初は目鼻立ちが整った寡黙な人だと思ったけど、話し始めてその印象はひっくり返された。
びっくりするほど残念なイケメンだった。
職場の飲み会でそれなりに下ネタ耐性をつけてきたつもりだけど甘かった。
最初あまり口を開かなかったのは、きっと彼の作戦なんだろう。黙っていればかなりの美形だし。
なによりわたし自身そんな彼の作戦にまんまとひっかかってしまったわけで…少し情けない。

だけど話をしていて、決して悪い人ではないことはなんとなく伝わった。
あまりにこちらが気乗りしない話題は避けてくれるし、飲み物や料理のことも気にかけてくれる。
だから第一印象だけで遠ざけてしまうのはいけないとそう思わされた。

「……お酒。全部飲めなかったら、クルツさん…助けてくれますか?」

「えっ?
 …あ、あぁ、勿論!!俺に任せなって!」

「ふふっ。…それじゃあ、クルツさんオススメのお酒を、お願いします」

「了解っ。 ー…すいませーん!」

彼の声が店内に響く。なんでも一度は経験してみないと…!
今までの保守的すぎる自分と少しだけバイバイしてもいいかも。
クルツさんと過ごす時間は、わたしにそう思わせてしまう不思議な力があった。




彼オススメのお酒はびっくりするほど飲みやすかった。
度数は決して高くないのに、手が止まらなくなるというか。
どこまで本気かわからなかったけど クルツさんの「介抱してあげる」という申し出に甘えていたのかもしれない。
結論から言うと、酔った。それはもう自分でも驚く程へろへろになった。

「……うぅ…くりゅつさん……
 このおさけ、強すぎませんかぁ?酔っちゃったじゃないですかぁ……」

「あー…、ハイハイごめんな?でも紫苑ちゃん自分でグイッグイ飲んでたぜ?」

「そ……そうれすけど……
 だってでも美味しかったんだもん……」

「だもん、って…。紫苑ちゃんそんなキャラだった?」

クルツさんは茶化すようにそう言う。
だけど今のわたしにはそれが凄く感に触ってしまう。

「………じゃあ、くるつさんから見たわたしって。どんなキャラなんですか…?」

「……え?紫苑ちゃん絡むタイプ……」
「おしえてください!」

ぐい、と顔を寄せ詰め寄ると困ったようにクルツさんは頭をかく。

「正直に言っていい?
 ……真面目すぎる、おカタイ女の子」

「やっぱり!」

多分そうなんだろうなとは思ってた。予想通りの回答だった。
だけどとにかく気に入らない。そう思われて当然の振る舞いをしていたことは自覚してるけど。
それでも今は理性でなく感情で判断をしてしまう。こういうところがダメなのに!

ぽかぽかとクルツさんの肩を叩いて不満の意を表すと、彼は困ったように笑う。

「わー!もうごめんごめんって!そんな怒るなよ!」
「もう!!…わたしだって、…わたしも、みんなみたいにかわいらしくなりたいですもん…」

ぽつりと心中を漏らすと、クルツさんは複雑な表情を浮かべた。

「あー…その、なんだ?そこまで悲観しないでよ、ね?
 せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?」
「ー…顔は関係なくないですか?」
「あるよ!勿体無いって本当に!!顔の可愛さは自分の武器のひとつだろ?
 上手く活用しないと宝の持ち腐れだぜ?持って生まれた才能みてーなもんだよ。

 …大体、何をそんな卑屈になってるんだよ。真面目女って、普段からからかわれてんのか?」
「───…ッ……!」

お酒をたくさん飲んだはずなのに、アルコールが一瞬抜けたように感じた。
だってクルツさんの言うとおりだったから。まさに図星。
入社してからずっと仕事一筋で打ち込みすぎたからか、同僚や上司から真面目すぎるなぁとよくからかわれていた。
真面目という言葉は決してネガティブな意味を持っているわけじゃないのに。
融通のきかない、可愛げのない女と暗に言われている気がして凄くいやだった。

真面目であるからこその利点もきっとあるはずと、半ば無理矢理自分を騙してきたけど。
それでも嫌だな、辛いなという気持ちは少しずつ蓄積されていたのだ。
…クルツさんの一言でそれを見事撃ち抜かれてしまった。

唇を一文字に結び、目線を下げたわたしを見て。彼はバツが悪そうに呟く。

「……当たり…か。
 でもさ、そんな気にすることないと思うぜ?少なくとも俺は。
 そう言ってくる奴らにとって、紫苑ちゃんが真面目すぎるってだけだろ?

 今、俺の目の前にいる紫苑ちゃんは。
 頑固で見栄っ張りで、素直な気持ちを中々表に出せない。
 恥ずかしがり屋の可愛い女の子にしか映らねえよ。それじゃダメか?」

「く………クルツ、さ………」

からかわないでくださいよ。
そう言おうとして言葉を呑み込んだ。
だって彼の瞳が。表情が、声音が、全てが。
さっきの言葉が冗談ではないことを証明していたから。

何も言い返せなくなって、口をぱくぱくさせていると

「そんな呆けてないで、笑いなよ。
 今の顔よりずっと魅力的になるからさ!」

そう言ってクルツさんは白い歯を見せて笑い飛ばす。
こうするんだよ、と言いながら両人差し指をわたしの口角に当てて無理矢理押し上げてくる。

「も、…もうっ…!……あはは…っ」

それが面白くて、おかしくて、思わず笑いがこぼれてしまう。

「そう!それそれ!!やっぱり紫苑ちゃんは笑った顔が一番いいよ、可愛い!」

クルツさんはそう言って、わたしのグラスにビールを注ぎ始める。
8分目まで入ったグラスを渡され、困惑するわたしに彼は妖艶に微笑んだ。


「さ、もうちょっと飲もうぜ? 夜はまだ……これからだろ?」





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スナイパーはよく見てくれている。

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   ...Route:Noal



「紫苑ちゃん、結構飲むんだな」
「自分でもちょっとびっくりですね。………引きます?」

ちらりと彼へ目線を送ると、フッと微笑みながら頭を振る。

「いいや?飲めたほうが楽しいからな。
 潰れないでいてくれればそれでいいぜ」

「……善処します……」

「おっと…潰れた経験アリか?まぁいいや」

そう言ってノアルさんは薄く笑って、グラスの残りを飲み干した。
この合コンが始まってから驚いたんだけど、彼は本当に聞き上手な男性だった。
もっと軽くて俺が俺がってタイプの人なのかなと思ってた。
ぐいぐい来られるのもちょっと怖かったので、ありがたいなぁなんてそんな事を考えていた。

なんとなく居心地のいい会話だけが続いてそのままコース時間が終了してしまった。


「今夜は来てくれてありがとう。よかったらまた一緒に呑もうね」

幹事であったアカツキさんが店の外で声をかけ、なんとなく解散の空気が流れ始める。
結局何も爪痕を残すことができなかった…。積極的にならなかった自分が悪いんだけど。

少し肩を落として、同僚と帰宅しようとすると急に腕を掴まれた。

思わずびっくりして振り向くとそこにいたのはノアルさん。彼は吐息だけでわたしを制止する。
『これ、もう少ししたら読んでくれるか』
そう言って渡されたのは小さな小さなメモ用紙。
なんとなくほかの子に見られたくなくて、思わず手のひらの中に隠した。

『1人の時に頼むぜ』

よろしくな、と短く告げてノアルさんは反対方向へ歩き始めた。
紫苑、帰ろう?と同僚に促されてわたしもなんとなく歩を進めたが…はっきり言って気が気じゃなかった。

この小さなメモ用紙には一体どんなことが書かれているんだろう。
その気持ちが抑えられなくて、特に何の用事もないのにコンビニへ寄るから先に帰ってねと告げて彼女達と別れた。
あてもなく店内をふらついて同僚達の姿が見えなくなったことを確認して…隠し持ったメモをそっと開く。

「これは……」

そこに書かれていたのは数字の羅列と『ここに連絡してくれ』という走り書き。
きっとノアルさんの番号なんだろう、早速電話をかける。

『もしもし。……紫苑ちゃんか?』

聞こえてきたのはやっぱりノアルさんの声。
隣でずっと話をしていたのに、耳元でダイレクトに彼の声を感じるとそれだけでゾクリとしてしまう。

『今どのあたりにいるんだ?迎えに行くよ』
「えっ、わたしも行きますよ」
『夜遅くに女ひとりでうろつくつもりか?大人しくそこで待ってなって』

そう説き伏せられ、わたしはもうしばらく店内をフラフラすることに。
普段あまり読まないファッション誌をめくっていると背後に気配を感じた。

「ノアルさん…!」
「よっ、お待たせ」

白い歯をちらりと見せながら微笑むノアルさんがそこに立っていた。
来てくれたことへの感謝を伝え、並んでコンビニを後にする。

「あの…」
「迷惑じゃなかったか?」
「……え?」
「俺はよ。紫苑ちゃんともう少し話したかったからさ」
「ノアルさん……」

──嬉しい。
ノアルさんもわたしと同じことを考えてくれていて、しかも行動をしてくれたんだ。
凄くすごく嬉しくて、思わず頬が緩んでしまう。

そんな様子をしっかり見られていたらしい。


「なんだ、紫苑ちゃんも嬉しかったんじゃねえか。ちゃんと言えよな」


…ちょっと恥ずかしくもあったけど。
彼と同じ気持ちだったことがお互いに分かって、これはこれでよかったのかもしれない。



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ノアル好きやねん……ただ作監さんによってヘアスタイル変わる…

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