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モットダ。
モットコロス。
モットコロシタイ。

モット…イッパイ…




「コロシテヤル…」




歪んだ笑みと共に、エレンが呟いた一言に
彼の肩を抱いていたミカサは目を瞬かせる。




「エレン…?」




意識が戻ったのか。

その顔を覗き込むと、酷く顔色が悪い。
虚ろな金色の目を数回瞬かせて、エレンは
至近距離にあるミカサの瞳を凝視する。



「エレン!ちゃんと体は動くか!?
意識は正常か!?」




現状を把握できておらず、混乱の最中にある
エレンを叩き起こすかのように、
前に立つアルミンが声を上げる。
温厚な彼女にしては珍しいその鬼気迫る表情に
エレンはハッと我に返った。




「知ってることを全部話すんだ!
きっと分かってもらえる!!」




辺りを見渡せば、壁の端に追いやられた
自分達3人を囲う、
駐屯兵団の兵士達と視線が絡み合う。
彼らは剣を自分達に向けている。
それは巨人を殺すための武器なのに。

いや、それ以上にエレンの心を抉ったのは
兵士達が自分に向ける畏怖の目。




「アイツは俺達を食い殺す気だ…!」




誰かがポツリと呟いた一言で、
今何が起きているのか、
目覚めたばかりのエレンの頭でも
理解することが出来た。



みんなは俺を恐れている。




(俺は…巨人に…!?)





「イェーガー訓練兵!!
意識が戻ったようだな!!」




巨人を次々と嬲り殺す巨人化した自分。

巨人に食われて失ったはずの左腕は
ちゃんとついている。



全部夢だった筈なのに
兵服の左腕の袖が切れているのは何故だ?





「今貴様らがやってる行為は
人類に対する反逆行為だ!!
貴様らの命の処遇を問わせてもらう!!」



傍らに寄り添っていたミカサが
険しい表情で剣を抜いて立ち上がる。
アルミンは依然として、自分を庇うかのように
此方に背を向けて立っている。

壁上固定砲の銃口は威嚇するように
此方に向けられていて、エレンは愕然とした。




「…率直に問う。貴様の正体は何だ?」





ーーー人か?巨人か?





(なんだ…その質問は……何なんだその目は…!)





随分と距離を置いて此方を見つめる瞳は皆
化け物を見ているような目だ。






化け物……

……巨人?



俺がそうだと言うのか?


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