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胸を鷲掴みそれを揉みしだくと、力が強過ぎるのかシャオの顔は苦痛に歪められる。




「や、柔らかい…子供だと、思ってたのに…」



目を爛々と輝かせ男は振り返り、ジャンに見せつけるようにシャオの胸を触る。咄嗟にジャンは視線を逸らした。



「見ろよ兄ちゃん、この胸!」



ブラウスを破る勢いで剥ぎ取り、張りのある胸の谷間が露になると、男は膨らみの間に直に顔を埋める。



「うっ……」



これには流石に不快感を隠せず、シャオは小さく声を漏らす。男は興奮に震える手で下着をずらし、隠されていた胸の飾りを見て歓喜の声を上げる。

白い肌に映える薄紅色は何とも淫靡で、男を誘うものだった。堪らずしゃぶりつくと、シャオの体が大きく跳ねた。それでも声は出さない。


唾液の音が耳に入り、自分の目の前で今何が行われているのか想像がつく。時折漏れるシャオの声と、男の気持ち悪い呻き声で、ジャンの精神状態ももう限界だった。



(兵長…早く来てくれよ…!!)




「んんっ!!」



「!!」



聞こえてきた嬌声にジャンは思わずそちらに顔を向けてしまった。見れば男の指がスカートの上から彼女の秘部に触れている。シャオの胸は男の唾液で光っていた。



獣のような目でジャンを見据え、男は笑うと、見せつけるように強めに指を動かす。




「なぁ…どうだ。声を聞かせてくれよ」




「………っ、」




「なぁどうだ?いいだろ?かわい子ちゃんの声が聞きたいなーー」




堅く口を閉ざしているシャオに無理矢理にでも快楽を植え付けようと、男が更に指に力を込めた瞬間。


ガシャンという音が聞こえたかと思うと、男の顔は床に叩き付けられていた。それは一瞬のことで、自分の身に何が起きたのか理解できないでいる男は、まだ痛みを感じる余裕もないらしい。


呆けた顔で自分を足蹴にしている小柄な男を見上げると、背筋が凍るような冷たい視線を向けられる。



…リヴァイは男を簡単に縄で縛り上げると、唾液まみれのその汚い口に猿轡をはめさせ、倉庫の奥へと投げ飛ばす。人ではなく物のような扱いだ。




「…これで見張りは全員か?」




「はい。全員拘束しました」




奥からミカサの声がする。それに頷き、リヴァイは無表情でシャオに近付いた。


ハンカチで彼女の身体を拭き、乱れた下着と服を直す。シャオの体は小刻みに震えていた。恐怖を表情に出さないように気丈に振る舞っている様が逆に痛々しい。




「…まだここの頭が来ていない。このまま待機だ。出来るな?」



また酷い目に遭うかも知れない。それでも出来るか、と言外にそう告げるリヴァイを、ジャンは信じられないと言った顔で見上げる。


シャオは彼と目と目を合わせて、こくりと頷いた。




ーーー感情を殺せ。
こんな序盤でしくじるわけにはいかない。



兵士としての意識が、シャオの心を冷静にさせた。







◆◇◆◇◆◇








長い夢を見ていた。
それは忘れていた過去の夢だった。


幼い頃のヒストリアには誰かに優しくしてもらった記憶はない。それでも夢の中で思い出す、自分に触れる温かな手。自分に明るい笑顔を向け、話しかけてくれる優しい存在。


ずっとこのまま眠っていたいと思わせるような、春の木漏れ日のような記憶。



しかし、意識が浮上すると共に、その記憶は跡形もなく消えていく。






「あ!?」




机に伏せて転寝をしていたヒストリアが急に声を上げたので、エレンは驚きびくりと体を跳ねさせる。

窓際で顔に夕日を受けながら涎を拭くヒストリアは、たった今まで見ていた夢を思い出そうと必死だった。しかし頭の中は既に空っぽだ。何の痕跡も残っていない。



「だめだ…何か大事な夢を見てた気がするのに…もう絶対思い出せない」



この感覚は何度も経験がある。それも一度や二度じゃない。頻繁に同じ夢を見ては忘れてしまう。まるで見えない何かの力で記憶を覆い隠されているかのように。



「あぁ…俺もそれよくあるぞ」



同意しながらエレンはヒストリアの向かいの椅子に腰を下ろした。窓の外を見れば、もう夕方だ。リヴァイ班が出発したのは午前中だが…皆は無事なのだろうか。特に、囮役になったジャンとシャオが心配だ。



「兵長がいれば何とかなると思いたいけど…」



エレンはリヴァイに絶対の信頼を寄せている。気付いたらそうなっていた。調査兵団に入団してまだ間もないのにも関わらずだ。

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