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しかしいつまでも黙ったままでいるのはよくないし、早いうちに言わないとリヴァイの方が可哀想だと考えたハンジは意を決する。
「避妊薬だよ」
その一言を聞いて、リヴァイは瞠目する。
今までの行為は全て中に出していた。
昨夜も、今朝も。
リヴァイは彼女との間に子供が欲しかったのだ。
古城での生活の合間にシャオ にはちゃんと生理がきていたので、まだ妊娠はしていないようだったが、それも時間の問題だろうとまで思っていた。
膣内に射精しても彼女は受け入れている様子だったので、リヴァイは彼女も同意だと勝手に思っていたのだ。
何も言えずに立ち尽くしているリヴァイを罰が悪そうに見下ろし、ハンジは続ける。
「あなたの気持ちは解る。すごく解る。お腹に子供が居るんじゃ壁外には行けないからね…。母親になったら余計に行けないだろう。だけど、シャオの同意がなければ…それは許されないことになるんだ」
辛そうに語るハンジの声を、リヴァイは上の空で聞いている。
「でもシャオは気にしいだから、避妊して欲しいなんて口が裂けても言えなかったんだろう。きっとあの子は貴方の気持ちも理解してるから。だから私に泣きついてきたんだろうね」
「…いつの話だ」
「あなたたちが古城に越してきた日の夜」
リヴァイは一月前を思い出す。初日のことは覚えてる。翌日のことは…そうだ、生捕りの巨人が殺されたと聞いてあいつは飛び出していった。そして…寝込んでいた。
ぎり、と拳を握るリヴァイに、ハンジは諭すように言う。
「責めないであげてよね。きっとシャオは、兵士として貴方と生きていきたいんだよ」
「…ハンジ。誰が、アイツを責めると?」
悪いのは俺だろう、と
リヴァイは心のなかで呟く。
自分の独り善がりな考えで、知らずに彼女を苦しめていた。隠し事などしたくないだろうに、後ろめたい思いをさせていた。
中に放った後でも、幸せそうに微笑んでいた。
一切、拒む素振りを見せず。
彼女に何と言えばいい?
ハンジが手にしている薬を見つめたまま、暫くの間リヴァイは動けなかった。
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