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人間はこの世に生まれた瞬間から、一人になる。自分という"個"として生きていくことになる。それでも、一人では生きられないように世界は出来ている。家族や友人、恋人…そういった関係を築きながら、やがて訪れる死へと向かっていくのだ。


個として存在する身体を誰かと繋ぎ合わせる行為は、他の何よりも"今、生きている"という事を実感できる行為だと、シャオはぼんやりと考えていた。



少しの鮮血と痛みを伴いながら、シャオの身体はリヴァイを受け入れた。



「あぁっ、ん!!」



「…っ、」



歯を食い縛って快感に耐えるリヴァイの額から、ポタリと汗が滴り落ちた。リヴァイのこんなに余裕のない表情を見れるのは、自分だけなのだろう。そう思うと堪らなく愛おしい。

なんでこの人は、こんなに心を揺さぶるような顔を見せるのだろう。



「…辛い、か?」



本能のままに腰を動かしたいのをぐっと堪え、リヴァイはシャオの目を覗き込み労ってやる。
破爪の痛みに眉を寄せながらも、シャオは気丈に微笑んで答えた。目元には涙を滲ませて。




「兵長…私、今、すごく幸せです…」




あなたとひとつになれて。




この状況でそんな事を言われ、リヴァイの理性の枷は外れてしまった。


ゆっくりと律動を始めると打ち込まれる快楽に合わせてシャオは鳴く。その声に煽られるようにリヴァイは腰の動きを早めていった。
肌と肌がぶつかる音と水音、そして耳元で響くリヴァイの獣のような吐息。


何故だろう、とても痛いのに、止めて欲しくない。ずっとこうしていて欲しい。


リヴァイは身体を起こして彼女の膝を掴み、シャオの足を目一杯開くと、一度ぎりぎりまで自身を引き抜いてから深い場所まで挿入した。それをゆっくりとした動作で繰り返す。視線は繋がっている部分を見つめている。


ゆったりとした動きにシャオは閉じていた目蓋を上げると、目を伏せたリヴァイの姿が目に入る。今私を愛しているのはこの人なんだと思うと胸が震えた。


彼に触れたくなってシャオが手を伸ばすと、此方に気付いたリヴァイが動きを止める。



「どうした」



「兵長、」



「なんだ」



「もっと、近くに行きたいです」



今まさに熱を分け合っている最中だというのに、シャオは我が儘を言った。そんな彼女が可愛くて仕方がない。フッと誰にも見せない優しい笑みを浮かべて、リヴァイは彼女の手を引いた。
シャオを自分と向かい合うように座らせ、細い身体を抱き締める。リヴァイが少し力を入れれば簡単に折れてしまいそうだった。

緩く下から突き上げると、彼女はぎゅっとしがみつき恍惚とした声を上げた。引き寄せるように腰に回された脚は恐らく無意識なのだろう。


シャオの腰を両手で掴み、上下に動かすと、形の良い胸が揺れる。細身なのによくここまで育ったものだ、と感心する程、シャオの胸の膨らみは魅力的だ。団服だとよく解らないが、シャオの肢体は男を魅了するものだった。



「兵長、私っ…」



息を乱したシャオが何かを言いかけたので、リヴァイは動きを止めてやる。繋がっている場所からは互いの体液が溢れ、シーツを汚していた。



「あ?」



「この前の、朝、起きたら兵長が居なくて」



はぁ、はぁ、と呼吸を整えながら、リヴァイの肩に額を当ててシャオは言葉を紡ぐ。髪を撫でながら黙って話を聞いていると、シャオはリヴァイの背中に腕を回して抱き付いてくる。



「あの夜は夢だったのかと、思いました…」



朝起きたら隣で寝ていた筈のリヴァイが居なかった。冷たいシーツを思い出すだけで、ズキンと胸が痛む。



「…悪かった。仕事は昼からの予定だったんだが」



二人が結ばれた日の翌朝。憲兵団がエレンを処分しようとしているという話が入り、一刻も早く手を打たないといけなくなったというエルヴィンからの伝令を、早朝からリヴァイに伝えに来たのはミケだ。ミケはリヴァイの隣で眠っているシャオをちらりと見て、珍しいな、とだけ言った。リヴァイが自室で女と寝ているなんて、と言いたかったのだろう。



「涎垂らして寝てるお前を起こすのは気が引けてな」



「えっ!!」



恥ずかしい!と顔を赤くさせてパッと顔を上げるシャオを、リヴァイは穏やかな顔で見下ろす。軽く唇にキスを落として冗談だと言ってやると、彼女はクスクスと笑う。



「…でも、夢じゃなかった…」



ポツリと呟いて、シャオは両手でリヴァイの頬を包む。その手の温かさにリヴァイは目を細める。二人は暫くの間そのまま、何も言わずに見つめ合っていた。

互いが互いに見惚れていた。


手の中に在る確かなもの。




二人はこの世界に生まれ落ちたその日から、それぞれが辛く険しい道を進み、出会い、そしてやっと探し求めていたものを見つけたのだ。

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