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次期女王がこんな所に何の用だ?

壁の王となる人物が、前線に居て許されるとでも思っているのか。




「オイ、ヒストリア。お前は戦闘に参加できない。安全な場所で待機だと言われた筈だ……そりゃ何のつもりだ?」




命令を守らないヒストリアに明らかに機嫌を損ねたリヴァイの声は低く、ピリリとした空気が周囲を威圧するが、ヒストリアはそれに怯むことなく堂々と胸を張って言い返す。




「自分の運命に決着をつけに来ました」




「……あ?」




どんなに冷たい視線を向けられようと、ヒストリアが臆する事はない。




「逃げるか戦うか選べと言ったのは、リヴァイ兵士長…あなたです」




「…………」




暴力で無理矢理ヒストリアを屈服させた時のことを思い出し、リヴァイは舌打ちをする。

このヒストリアといい、審議所でボコボコに蹴り倒した事があるエレンといい、104期には中々骨のある奴が揃っているようだ。普通の人間ならトラウマになってもおかしくない筈なのに。


二人が無言のまま睨み合っていると、それまでスケッチに没頭していたシャオが急に立ち上がる。


そして、壁の外の平原を指差した。




「兵長、来ました!」




辛うじて肉眼で確認できる場所に土煙が立っている。調査兵団から数時間遅れで、ロッド・レイスはこの地へ辿り着いた。その異形の姿に、人間だった頃の面影は何処にもない。



「あぁ…クソ、時間がねぇ…」



可憐な見掛けに反して気の強いヒストリアを安全な場所へ戻すのは至難の業だと考えたのか、リヴァイは不服そうにそう零しただけで、それ以上何も言うことはなかった。







ーー…駐屯兵団が地上及び壁上固定砲で応戦を始めた頃、調査兵団の精鋭達は壁の上へ集まり、エルヴィンが立てた作戦の最終確認を始める。



「エルヴィン!持ってきたよー!」




怪我の為、今回戦闘には参加出来ないハンジが用意したのは、ありったけの火薬とロープとネット。まだ組み立てていない。そして特定目標拘束兵器が二つ。こちらの兵器は技術班が開発したもので、女型の巨人を捕獲する際も使用したものだが、火薬に関しては先程思い付いたばかりの付け焼き刃だ。




「…砲撃はどうなの?」




「セミの小便よか効いてるようだ」




「じゃあ…本当にコレ使うの?」




「……………」





しーん、という重い沈黙がリヴァイとハンジの頭上にのし掛かる。それは小一時間前、シャオのスケッチを見たエルヴィンが立てたばかりの作戦。


彼女の絵を見たエルヴィンは感嘆の声を上げた。そしてまじまじとシャオの顔を見つめる。



『君が描いたのか』



それにこくりと頷いてみせ、シャオは白黒で描かれた巨人の顔を指差す。



『目標の巨人は高熱の蒸気を噴出し、近付くのは困難です。そして100m級の巨体……自重ゆえか顔を大地で削りながら進んでいます』



『外側からの攻撃は難しいということか…何とかして蒸気を止めさせ、その一瞬の隙をつければ…』



口元に手をやり、厳しい表情で思考を巡らせるエルヴィンが口を開いたのは、僅か数分後のことだった。



『ー…ならば内側から破壊する』



スケッチブックを開いたまま木箱の上に乗せ、エルヴィンはリヴァイ班の面々を周りに集めた。この時彼女が描いた絵を初めて見た104期生達は、驚いて顔を見合わせる。



『巨人の口の中に火薬を投げ込み、内側から爆発させる』



『口の中に火薬ぶちこんで、あわよくば項ごと吹っ飛ばそうってことか?』




『そうだ』




その突拍子もない作戦に班員が唖然としているなか、エルヴィンはちょうど向かい側に立っているエレンを見下ろし、有無を云わさぬ声色で告げる。




『巨人化したエレンがロッド・レイスの口内へ火薬を放り投げる。蒸気を噴出するほどの高熱なら勝手に燃えて爆発するだろう』



『…巨人が都合よく口をアホみてぇに開けといてくれればな』



皮肉を込めてリヴァイがそう追及するも、エルヴィンは表情を崩さない。

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