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感動の再会の一方で、リヴァイとコニー、そしてジャンの三人が、爆風に堪えながら必死に枷の鍵を開け、エレンを解放する。

急に体の自由が戻り、その場に膝をつくエレンの後ろで、リヴァイは天井を見上げて舌打ちをする。



「……何だこのクソな状況は。超大型の巨人ってのよりデケェようだが……」




巨人化したロッド・レイスは、見たところ超大型巨人の倍、優に100mを越える巨体で、今にもこの空間を突き破りそうな程だ。


つまり、このままだと天井が崩落する。




(何で……!?俺を食うんじゃなかったのか……!?)




このままだとみんな死ぬ。ここまで来てくれた、リヴァイ班のみんな。そしてヒストリアも。


巨人化しようとも考えたが、地面が落ちてくるのだ。巨人の体程度では防げない。みんな潰れてしまう。

辺りはレイス卿が放つ蒸気で視界が悪く、至るところが崩れていて逃げ道もない。


エレンは茫然と、自分を取り囲むリヴァイ班の面々を見渡した。彼らはまっすぐに、エレンを見つめていた。額の切り傷から流れる血を感じながら、エレンは項垂れる。



「〜〜〜ッごめん、みんな……!」



止めどなく流れる涙は顔を汚す血と混ざり合い赤く染まる。



「俺は役立たずだったんだ…そもそもずっと最初から、人類の希望なんかじゃなかった……」



俺なんかに関わったから、みんな死んでいく。


エレンの脳内で幾つもの光景がフラッシュバックする。巨人に食われる母親の姿、女型の巨人に殺されていくリヴァイ班の四人の姿。巨人化出来ず、目の前で飲み込まれたハンネスの姿。


自分はいつも、誰かが死んでいくのをただ眺めているだけの役立たずだった。



しかし、そんなエレンの弱気な発言を鼻で笑い飛ばしたのは、喧嘩相手であるジャンだった。



「何だ?悲劇の英雄気分か?てめぇ一回だって自分の力一つで何とかできたことあったかよ?」



「………、」



「弱気だな!初めてってわけじゃねぇだろこんなの!」



そう言って笑うのはコニー。この状況で何故笑えるのかが知りたい。その隣では対照的に、恐怖の余り泣いているサシャが、半ばヤケクソ気味に叫ぶ。



「別に慣れたかぁねぇんですけどね!」




エレンの左側ではリヴァイとミカサが、冷静に状況を把握している。



「エレンとヒストリアを抱えて飛ばなくたって脱出は厳しい…」



「あの巨人の熱…これ以上近付くと焼け死にそう」



二人とも何とか生き延びる術を探しているようだが、ここから生きて脱出できる確率は絶望的だ。




「ダメだ…もう逃げ場はない…」




エレンの唇から零れるのは弱気な言葉だけで、自分自身に呆れる。こんなんで、よくも巨人を駆逐するなんて言えたもんだ。その時、肩を落とすエレンの前に膝をつき、声をかけたのはシャオだった。




「大丈夫だよエレン」




大好きな一言が耳に届き、エレンは顔を上げる。



「一人じゃないよ」




久しぶりに見たシャオの微笑みは、じんわりとエレンの胸を熱くさせる。その微笑みに見惚れていると、ずいっと視界に入り込んできたのは強気な瞳を向けてくるヒストリアだった。



「エレン、何もせずにこのままみんなで仲良く潰れるか焼け死ぬのを待つの?私達が人類の敵だから?」



「………それは……」




こんなに強い子だったのか、ヒストリアは。こんな小さい体なのに、ヒストリアはエレンよりも余程勇敢だ。言葉に詰まったエレンがばつが悪そうに下を向くと、あるものが視界に入る。


それはレイス卿の鞄の中から転がった、ラベルに"ヨロイ"と書かれた瓶だった。




(ヨロイ…?)




その言葉から連想される物は一つしかない。

瓶の中身は恐らく、鎧の巨人の脊髄液。
それを口に含めばどうなるか、エレンの頭でもすぐに解った。先程ロッド・レイスがやって見せたように。

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