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土砂降りの雨の中、ソーコは再び万事屋を訪れた。今回は一人で訪れた訳ではない。
土方と、廃寺の孤児達も一緒だ。


昨夜、道信が殺害された。


その報告をするためにやって来たのだ。




「一応知らせとかねーとと思いましてね」



淡々と用件を告げたソーコは、隊服に身を包んでいる。今日は仕事の顔だ。きっと誰よりもショックを受けている筈なのに、持ち前のポーカーフェイスはそれを微塵も感じさせない。


「…ゴメン銀ちゃん」


「僕らが最後まで見届けていれば…」


神楽も新八も、責任を感じて項垂れている。

ソーコに見張りを頼まれたのは二日前。
一昨日の夜は何もなく、油断していたのかもしれない。
昨夜二人は道信自身と接触し、江戸を出るという話を聞いた。子供達を馬車に乗せ、自ら手綱を持って出発したのである。その直後に煉獄関から追っ手がかかり、二人はそれを迎え撃った。

全員倒したと思っていたが…。

二人はすぐにソーコに連絡し、知らせを受けた真選組のパトカーが廃寺近くの山道に向かうと、馬車は横転し、道信は絶命していた。辺りには泣きじゃくる子供達の声だけが響いていた。


「オメーらのせいじゃねーよ。野郎も人斬りだ、自分でもロクな死に方できねーのくらい覚悟してたさ」


それはソーコに向けての言葉でもあった。きっと自責の念にかられているだろう、と心配しての言葉だったが、彼女はその後も無感情に淡々と用件を述べる。


「ガキどもはウチらの手で引きとり先探しまさァ。情けねェ話ですがあたいらにはそれぐらいしかできねーんでね。旦那ァ…妙なモンに巻き込んじまってすいませんでした」



そして力なく頭を下げると、今度は新八と神楽に向き直った。


「オメーらが無事で良かった…報酬だ、貰ってくれィ」


そう言って封筒を机の上に置くと、くるりと背を向けた。帰る素振りを見せるソーコを呼び止めたのは、今にも泣きそうな顔をしている神楽だった。

震える手で封筒を掴み、ソーコの小さな背に向けて投げつける。


「要らないヨ、こんなもの!ワタシ達…何も出来なかったアル」


思いを吐き出すと同時に、堪えていた涙が溢れてきた。神楽にとって真選組の沖田はどうしても好きになれない女だったが、それを知った上で仕事を依頼してくれた。お前の腕は認めている、と言われたようで嬉しかったのに。

背後で聞こえる泣き声にソーコはその場を離れることができない。

立ち竦むソーコに近付いたのは、玄関先で待っている筈の孤児達であった。
パタパタと足音が聞こえ、数人の子供が居間に入ってくる。



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