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真選組に復帰してからというもの、ソーコは馬車馬の如く働いた。二ヶ月分の穴を埋めるかのように。
朝の稽古も気合いが入っていたし、今までサボりがちだった市中見廻りもしっかり行っていた。
相当寝たきりの生活が性に合わなかったのだろう。

病み上りであまり無理をしないように近藤は気を配っていたが、非番を与えても勝手に何処かで調査をしていたり、取り締まりをしていたり、周りが心配するほど動き回っていた。


そんな中、ソーコは煉獄関という違法闘技場を発見した。そこで夜な夜な行われているのは、正真正銘の殺し合い。廃刀令のこのご時世、真剣勝負など滅多に拝めなくなった時代だからこそ、群衆は群がり賭け事に興ずる。
一夜で莫大な金が動くこの闘技場は、役人だからこそ手が出せない。調査を進めて解ってきたのが、この場所はどうやら幕府も絡んでいるようなのだ。
下手に動けば真選組も潰されかねない。

だからと言って見て見ぬ振りは出来ないのがソーコだった。
非番を利用してちょくちょく一人で覗きに来ているものの、個人でどうこうできる規模の問題ではない。

どうしたものか、と悩みながらもソーコは私服の藍色の着物を着て、今日もまた煉獄関へと足を進める。ソーコのような小綺麗な女が裏通りを歩いていると嫌でも目立ってしまうようで、裏社会の住人達が次々振り返る。しかし、帯刀していることを知ると皆目を逸らした。

怪しい人物がいないかソーコが目を光らせていると、どんよりとした空気が流れている裏通りに、不釣り合いな賑やかな声が聞こえてきたので、自然と目がそちら側に向く。
そこに居たのは万事屋の三人だった。


「いやー止まった方がいいよ彼女…変な方向にいっちゃってるよ」


「お通ちゃんは歌って闘うアイドルに転向したんです!」


万事屋の一員・志村新八が大ファンである、アイドル・寺門通が出場する女子格闘技を観戦しに来たのだ。ちょうど会場がこの辺りにあった。


(万事屋……。万事屋?)


頼まれれば何でもやるという仕事。
ソーコの頭の中にピカンと何かが閃いた。
カツカツとヒールの下駄を鳴らして近付くと、銀時が此方を振り返り「お、」と声を漏らした。
それに続いて新八と神楽もぐるんと首を此方に向ける。


「いやー奇遇ですねィ」


軽く声を掛けると、永遠のライバル・神楽が見るからに不機嫌そうな顔に変化した。



「沖田さん、お休みですか?」


新八が聞くとソーコは軽く頷いて見せる。


「私服だと解んなかったわ。顔色良さそうだな」


そう言ってソーコの頭にポンポンと手をやった。
その行動に呆気に取られて目をぱちくりさせると、銀時はソーコを覗き込むように屈んで笑った。

その二人の間に壁を作るかのように神楽が下からジャンプしてきたので、反射的にソーコは半歩下がった。


「こんなとこで何してるアルかキンパツ。格闘技出るアルか?」


「出ねェよチャイナ…今日はオフでねィ」


「あーーっ!!ヤバいもうこんな時間だ!!」



お通ちゃんの出番が始まっちゃう!と騒ぎ出した新八の恰好は、法被を着て鉢巻きをし、寺門通親衛隊スタイルだ。そもそも何故お通が格闘技などを始めたかというと、先日熱愛スキャンダルを起こしてしまい人気が急落し、仕事を選んでいる場合ではなくなった為である。スキャンダルを起こしたとしてもお通愛は変わらない、なんせ新八は親衛隊の隊長なのだ。
先行きます、と吐き捨て神楽の手首を掴むと、新八は全速力でダッシュし、数秒後にはその背中は小さくなっていた。

残された二人は暫し沈黙する。

神楽を残せば延々とソーコに絡むだろうと判断し連れていってくれたのはいいが、今度は静かすぎて落ち着かない。

最初に口を開いたのはソーコだった。
声をかけた目的を思い出したのだ。



「旦那、お暇ならちょいと付き合いませんか?面白ェ見せ物が見れるトコがあるんですがねィ」


丁度良い。殺し合いを子供に見せるのは少々気が引けるが、今なら銀時一人だ。銀時は二つ返事で頷いた。



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