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えいりあんが出てくると思っていた一同は拍子抜けし、ぽかんと親子の姿を見送る。
後から続いて出てきたのは、万事屋の残り二人。銀髪と眼鏡。


「すいません僕もマロンパフェいいっすかね〜?いやちょっと待てやっぱフルーツパフェにしようかな…って」


恥ずかしい独り言は静まり返った辺りに響き、勿論その場に待機していた真選組の耳にも届く。
銀時は銀行の周りを包囲している隊士達の中から、すぐにソーコの姿を見つけると足を止め、
「オッキー!今日も可愛いな」
と軽く声を掛けた。

ソーコは驚いて瞬時に視線を逸らす。


「…あれ?」


シカトぉぉぉ!?


「銀さん早く追いかけましょう!」


新八に急かされ慌てて神楽を追うが、銀時の脳内はオッキーに無視された、その事実がぐるぐる回っている。いつの間に嫌われてしまったのだろうか。

何かした!?俺何かした!?!?
焦って冷や汗がだらだらと流れてくる。


「新八ィィ俺オッキーに嫌われるようなことやらかしたっけ!?全っ然記憶にないんですけどォォ!!」


泣きつく相手は恋愛経験ゼロの少年。
新八に尋ねても全く意味がない気もするが、誰かにすがらないと灰になってしまいそうだ。
しかしそのチェリー少年は冷静に意見を述べた。


「そうか、銀さん記憶なかったんですもんね…沖田さんを他の女の子と間違ったんですよ。その後ビンタされてました」


それを聞いてサーッと青ざめる銀時を、新八はじろりと横目で見る。
他の女の子と間違えたって…確実にあの子と間違えた。あの子と間違えたとなれば、もしかしたらかなり親密に何かを言ってしまったかもしれない。それ以前に他の女の子と間違えるとは相手に大変失礼な事じゃないか。

しかし今更悔やんでも遅いのだ。
過ぎたことを悔やんでも状況は何も変わらない。
これからどうするか、だ。

先日、幾松から含みのある助言を受けていたので、もしかしたらオッキーも自分を…?なんて期待していた自分が馬鹿だった。


先程唇を尖らせて自分から目を逸らした彼女を思い、銀時は遂に決意した。
今度こそちゃんと、オッキーをデートにお誘いする!と。





◆◇◆◇◆◇



嵐が去った大江戸信用金庫。
えいりあんは既に星海坊主の手によって始末されていた。しかし、相当派手に暴れたらしく、建物内は滅茶苦茶だ。営業再開までは大分時間がかかるだろう。


「いいか、丁重に外に運び出してくれ」


えいりあんの死骸を欲しがっているお偉いさんがいらっしゃるので運んでほしい、と入国管理局からの要請を受け、真選組はそのまま銀行に留まった。


「しかし星海坊主ってのはいつもこんな化け物とやりあってんですかィ?どっちが化け物だかわかりゃしねーや」


こんな気味の悪い生物とやり合うなんて、自分だったら御免被りたい。愛用の菊一文字が変な液体で汚れてしまう。


「おまけにあのチャイナ娘の親父だったとは…」


先程の二人のやり取りを見て、ソーコは神楽のことを思う。過去に天人について勉強していたソーコは、神楽が戦闘種族である夜兎であることは、初対面で解っていた。夜兎族は普通の人間のような姿をしているが、特殊な風習があることも知っている。先程見た限りでは二人の親子関係は崩れてはいないようだが、本当のところはどうなのだろう。



「男って奴には二種類の血が流れてる。一つは家族や仲間、自分の巣を守り安寧を求める防人の血。もう一つは巣から出て獲物を求めさすらう狩人の血だ」


作業をしながら語りだした近藤の言葉を、ソーコはえいりあんを眺めたまま、しっかり耳を立てて聞いていた。


「あの男の目は狩人というより獣に近い。おとなしく巣におさまっているタマではあるまいよ」



そりゃあ、夜兎族だからな。と、心の中で呟く。
夜兎族にしては天真爛漫な神楽のことを、ソーコは決して嫌いではなかった。顔を合わせれば向こうが突っかかってくるため、犬猿の仲と称されても仕方ないが。


「もしかしたらあの娘、今まで寂しい思いをして生きてきたのかもしれんな…」



「………」



夜兎族らしからぬ、人間らしい目をした神楽の憎たらしい表情を、ソーコは思い浮かべて動きを止めた。



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