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翌日になってもまだえいりあん騒動は治まらない。今度はターミナルからの緊急要請だ。
謎の生物によって現在一隻の船がターミナル内で事故を起こし、機体の一部が壁面から突き出た状態だという。
昨日よりも被害が拡大していることもあり、真選組隊士達に笑みはない。


「謎の生物が急激に巨大化しております、これは危険です!」


ターミナルは大パニックになっており、そんな中でも報道陣はカメラに向かって真摯に状況をリポートしている。


「おーう危ないぜィ、どいときな」


民衆の不安を煽らないようにわざと間延びした声で避難誘導を始めるソーコと、それに続く隊士たち。七番門を任されたのは一番隊だ。
まだ必死にカメラを回そうとする報道陣の首根っこを掴みながら、現場に到着する前に近藤に言われた一言を思い出す。


『ターミナルは幕府の重要建築物に指定されているんだ。許可なく発砲すればこっちの首が飛ぶ。上から許可が下りるまで避難誘導を優先しろ』


(……とは言ったものの…)


ターミナルの壁から突き出ている巨大な蛸の足のようなえいりあんを観察しながら、ソーコは攻撃を食らわないように足を動かす。
どうやらあのえいりあんは、しぶとい上に食べたら食べただけ成長する厄介な生物のようだ。しかも運悪くターミナルに巣食ってしまった。ターミナルに流れる巨大なエネルギーそのものを食らったため、瞬く間に急成長を遂げたというわけだ。
このままでは江戸は食いつくされてしまう。


「やべェな、誰か一人は止め役に興じねぇと」


吐き捨てるようにそう言うと、ソーコは刀を抜く。


「!沖田隊長!?」


隊士達の制止は聞かず、ソーコは単身でターミナルに向かって駆け出した。発砲が出来ないのなら、刀で行くしかない。
一分一秒も、待っている暇はないのだから。


「無駄ですよ!!あんなに巨大なえいりあんに刀一本で向かうなんて…」


声を枯らしてソーコを引き止めようとする隊士達の横を、何者かが風を切って通り過ぎて行った。


「!?」


巨大な白い犬の背に乗って駆け抜けて行ったのは、最近何かと縁のある万事屋の男。片手には木刀だけを持って、ソーコとの距離をみるみる縮めていく。獣の足では簡単に追い付き、前だけを見て走るソーコの背を目を細めて眺める。


男達が臆して近付けずに居る場所へ、一人で平気で乗り込んで行くなんて。


「オッキー!危ねぇから戻ってな」


声を掛ければやっと此方に気付いたようで、いつの間にか後ろに居た銀時に、ソーコは驚き目を見開いている。


「そういうわけにも行かねぇんでィ、あそこ!」


ソーコには珍しく、焦った様子でターミナルの方を指差したので、自然に銀時の目もそちらに向く。

ソーコが指差した先にあったものは。



「神楽ァ!!」



えいりあんの足にぐるぐる巻きにされ、気を失っている神楽の姿。
走っている途中で神楽の姿を見つけ、ソーコは冷静さを失っていたのだ。


銀時はすれ違い様にソーコの体を持ち上げ、自分の後ろに乗せた。


「どーせ戻れって言ったって戻んねぇんだからチョット手伝って!」


咄嗟の判断だったので吐き捨てるようにそう言ってやると、後ろに乗せた彼女は銀時の着物を掴んでこう返した。



「…仕方ねェ、デート一回で受けてやってもいいですぜィ」


小声ながらも確かに耳に入った言葉に、一瞬目を丸くさせると、銀時は僅かに微笑んだ。



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