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エンドロールが終わるまで爆睡していたソーコを起こし、興奮冷めやらぬまま二人は映画館を後にする。帰りにきちんとパンフレットも買い、やけに機嫌の良い土方はソーコに飲み物も奢ってくれた。
たっぷり昼寝も出来た上にタダで珈琲も飲めるとは、気前がよすぎて何だか気持ちが悪い。
正午を過ぎ、二人はパトカーに戻った。
まだ感動を引きずって目を潤ませている土方を横目に、普段通り市中見廻りに向かおうとパトカーを発進させた瞬間、近藤から無線で連絡が入る。
『トシ、居るか?緊急事態だ!』
妙に緊迫した様子の近藤に、ソーコは前屈みで応答する。
「どうしたんでィ近藤さん?」
『お!ソーコも乗ってるのか!ちょうどいい!実は星海坊主殿が言っていたえいりあんが発見されたようでな、現場に急行してほしい!』
場所は大江戸信用金庫。寄生型のえいりあんで知能は低いが食料調達のために何でも狩る危険生物だ。
今回は運悪く人間に寄生してしまったらしい。
近藤の一報を受け、土方はアクセルを強めに踏んだ。
まだ映画の余韻に浸っているのか、気分は竹内刀である。えいりあんがなんぼのもんじゃあぁ、と劇中の決め台詞が思わず口をついて出る。
映画を全く観ていないソーコは、若干引き気味でそれを見ていた。
寄生型えいりあんの騒動は既にニュースで報道されているらしく、銀行の近くは渋滞していて車ではとても入れそうにない。
仕方なくパトカーを降りて駆け出すと、既に到着していた他の真選組隊士達が銀行の入り口を固めていた。
近藤の姿も見える。
「近藤さん!」
大声で呼びかけると近藤はすぐに此方を向いてくれた。
「早かったな、ソーコ、トシ!」
「近くに居たもんで。状況は?」
野次馬でごった返す中、近藤は事件発生から現在までの流れを早口で二人に説明する。
元々真選組は、銀行強盗で通報を受け現場に駆け付けた。犯人は人質をとって立て籠り、これは長期戦になると予想されたが、不意に入口の自動ドアが開き、中が見えた瞬間、人でないものの犯行であることが解り、各隊に応援を頼んだとのことだ。
「ついさっきまで中から大きな音が聞こえてたんだが、今は沈静化している。…人質の無事も確認できていない」
「そいつぁやべェ。なんとか中に入る方法はありやせんかね?」
土方さん、と振り返ってみれば、闘志を燃やした瞳の土方が刀を握りしめて仁王立ちしている。影響され過ぎで、ここまでくると笑えてきた。
「…近藤さん、土方さんが何とかしてくれるみてぇです」
「なに、本当かトシ!?」
込み上げてくる笑いを堪えることが出来ず、ソーコは震える声で言うと、それを鵜呑みにした近藤は希望に満ちた眼差しで土方に視線を送る。
なんだこの人、面白ェ!
久しぶりに笑顔を浮かべて土方を見守っていると、銀行の自動ドアに人影が映る。
誰かが出てくる。
はっと我に返ったソーコが「かまえ!!」と号令をかけると、現場の雰囲気が一瞬で変わった。
ぴんと張りつめた空気が流れ、自動ドアから出てくる人物に皆一斉に注目する。
ウィーン、とドアが開いて出てきたのはーー…
「いいからこいってんだよ。アレだ、マロンパフェ食わしてやっから。な?」
「ちょ、離してヨ。離れて歩いてヨ」
「なんだお父さんと歩くのが恥ずかしいのか!?」
マスクを外し、眼鏡に簾頭、チョビ髭といったいかにもオジさんという格好の星海坊主と、腕を引かれ嫌々それについていく万事屋のチャイナ娘だった。
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