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なぜこのような空気が漂うのかというと、武州で病を患っているソーコの姉が、土方に淡い恋心を抱いていたのが始まりだった。
ソーコに親はなく、姉である沖田ミツバが母親代わりとして、ソーコを育ててくれた。
そのため姉のことをとても慕っており、ミツバの前では普段のふてぶてしさからは考えもつかない程大人しくなる。

しかし土方は、そんな大切な姉の想いを拒んだのだ。運悪くその現場を目撃してしまったため、姉を傷つけた土方を殺してしまいたいほど憎んだが、土方がミツバを傷つけない為に選んだ辛い決断だということもまた理解してしまい、葛藤しているのだった。

江戸に出てきて、真選組がつくられて、毎日顔を合わせるが、未だに面と向かって真面目な話は出来ない。



「……二人で同じところ探してたって仕方ねぇや。ここは二手に分かれましょ」


あたいはあっち探してくるんで、そう言い残してソーコはいそいそと背中を向けて歩き出した。

土方としては、この空気をどうにか変えられないものかと密かに悩んでいるのだが、何分自分にも否がある案件なので、どうすればいいのか解らない。
ソーコがふざけて土方殺す、などと言ってくる内は別に今のままで良いかとも思っているが。
そう遠くない未来、ミツバの命に終りがきて、その時にソーコがどうなってしまうのかが本当に心配だ。

なかなかうまく行かないことが多い、と、深い溜め息を吐いた時だった。


「おーい兄ちゃん危ないよ」


頭上から気だるそうな声が聞こえたと思い、何気なく上を見上げたら、束になった木材が自分目がけて落ちてくる。
実戦で培った瞬発力で咄嗟に後ろに跳び、危機一髪難を逃れたが、一秒でも遅れたら危うく死ぬ所だった。


「あっ……危ねーだろーがァァ!!」


恐怖と怒りでわなわなと震え、声を荒げる土方に対し、ヘルメットを被った男はのっそりとした動きで梯子から降りてくる。


「だから危ねーっつったろ」


ボソッと呟いてヘルメットを脱いだ男の顔を見て、土方は驚愕する。
現れた銀髪。見覚えのある死んだ魚の目。



「オメーは……池田屋ん時の……!!」



池田屋騒動で桂と共に騒ぎを起こした帳本人。
本人は勝手に巻き込まれた被害者面をしていたが、土方は怪しいと見ている、万事屋・坂田銀時。
そういえばコイツも銀髪だった。
近藤さんを負かす奴なんて早々いないと思うが、得体の知れないコイツならありえない話でもない。

銀時は暫く土方を見て、漸く思い出したらしい。
あ、と言ったかと思えば、すぐに土方の周りをキョロキョロし始めた。その様子で奴が何を探しているか解ってしまい、土方は眉間に皺を寄せる。


「……ソーコならいねーよ」


どいつもこいつも。
この鬼副長を苛立たせるには充分過ぎる内容だ。
ソーコ?と首を傾げた銀時は、次の瞬間には理解したらしく、あぁ、と一人納得した。


「オッキーってソーコちゃんっていうの。なんだ、いねーのか。つまんねぇ」


それならもう用はない、とでも言うかのようにクルリと背を向け、銀時は梯子を登り始めた。
今日は眼鏡の少年とチャイナ娘の姿はなく、一人で仕事中らしい。ちょうどいい。


ーーーここでコイツを仕留める。


土方の瞳がぎらりと光った。



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