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なんとか放課後まで新一から逃げ切れたけど、今日の夕食どうしようかしら?
新一、あたしが徹底的に避けてることにイライラしてるみたいだったし、このままいつもみたいに一緒に夕食とったら…絶対大喧嘩になるな。
よしっ、今日の夕食は新一の分だけ作って、新一が帰ってくる前に帰っちゃおう。


『あっぶないなぁ…』


さっさと工藤家に行こうと歩き始めたあたしを、後ろからすっごいスピードで来た車が急ブレーキをかけて道を塞いで止めた。
危ないじゃない!
まさかとは思うけど、端からあたしを巻き込むつもりだったんじゃないでしょうね!?
あたし、今イライラスイッチ入りやすいんだから、ケンカ売って来るつもりなら買っちゃうかもしれないわよ?

あれ…ちょっと待って。
あたし、この車の持ち主、一人知ってるんだけど。
いやいやいや、まさかね。
だって、その人は今先生と一緒に世界中回ってるんだってこの前聞いたばかりだもの。
そんなことあるわけが…


「なまえちゃーんっ!!」

『ゆ、有希子さん!?』

「なまえちゃん、会いたかったわっ!!元気にしてた?夏休み以来だけど、また女のコらしくなったじゃない!やっぱり女のコは成長するのが早いわね。新ちゃんなんか身長は伸びてるみたいだけど、まだまだ子どもって感じなのに!あたしもなまえちゃんみたいな女のコが欲しかったわっ!!でも、なまえちゃんは家の娘だものね!こんな娘がいるなんて、みんなに自慢したいくらいよっ!!」


以上、車から降りて、あたしを抱き締めてキス一つした後の有希子様のノンブレス会話でした。
言い切った有希子さんはあたしをいつもみたいにむぎゅーって強く抱き締めてくれた、けど。
何で有希子さんが日本に居るんだ?


『有希子さん、何でここ(日本)にいるんですか?』

「あら!いけない!なまえちゃんに会えたのが嬉しくて、すっかり忘れてたわっ!!なまえちゃん、今は時間がないのよ!感動の再会は後にして、早く車に乗って頂戴!!」

『え?』


今の、感動の再会じゃなかったの?
よく分からないままに有希子さんに押されてそのまま車に乗せられたけど、ここから工藤邸までは歩いても15分くらいだ。
わざわざ車で行くような場所じゃないし…時間がないってどういうこと?


『有希子さん、一体どこへ行くんですか?』


工藤家に行くにしてはオカシイなとは思ってたんだけど、案の定、あたしを乗せた有希子さんの車は只今高速を走ってます。
それも、次々に車を抜かして行く程の猛スピードで。
有希子さん、捕まるとかどうこう言う前に、あたし、もう少し安全運転希望です!


「優ちゃんが予約したホテルよ。ただ、優ちゃんは後から来ることになってるから、あたしたちは先に行ってスパで女を磨いて優ちゃんを驚かせようと思ってたんだけど…ちょっと時間が危ないのよ。なまえちゃん、しっかり掴まっててね!」

『へ?』

「喋ると舌噛んじゃうかもしれないから、気をつけてね!」


有希子さん、一体どれだけ飛ばすつもりなんですか!?
有希子さんお気に入りのイギリスのお嬢様の凄さは今まで十二分に味わってるので、日本でくらいは安全運転して下さいっ!!
って言いたいんだけど、身体にかかる負荷がそれを許してくれなかった。
これ、下手に喋ると本気で舌噛んじゃうからっ!!


「何とか間に合いそうね。なまえちゃん、もうすぐホテルに着くわよ!景色もキレイだし、大きなプールもあるから、きっとなまえちゃんにも気に入ってもらえると思うわっ!!」


結局、高速を降りるまであり得ないスピードで爆走したイギリスのお嬢様は、下道に降りても有希子さんが時計を確認するまで、車を抜かしまくってた。
…よく事故らなかったな。


「なまえちゃん、ここよ!素敵なホテルでしょう?」

『…』


何ですか?
この見ただけで高級感が伝わってくる、超高級ホテルの代名詞みたいなホテルは。
先生が予約したホテルって聞いた時点で、そんじょそこらのホテルじゃないだろうとは思ってたけど…。
あたし、こんなとこに連れて来られてもどうしたらいいか分かりませんよ?


「工藤様、お待ちしておりました。お車とお荷物をお預かり致します」

「ありがとう。あたしたちはこのままスパに行くから、荷物は部屋まで運んでおいて頂戴」

「かしこまりました。ごゆっくりとお寛ぎ下さい」


あれ?ホテルってまずはチェックインとかするんじゃなかったっけ?
こんな高そうなホテルになんて泊まったことないから、よく分かんないけど、顔パスなの?
え?名前書いたりするのって庶民のホテルだけ?


「なまえちゃん、何してるの?行くわよ?」

『あ、はい』


なんかツッコミを入れるだけ自分が虚しくなって行く気がして、大人しく有希子さんの後をついて行くことにした。


「なまえちゃん、コースはもちろんフェイシャルを含めたフルコースにしてあるから、安心してね」


何に安心したらいいんだ?
車に乗せられてから、一切考える時間を与えてもらってないから、今自分がどういう状況なのかもイマイチ分かってないんだけど…。


「ここはドレスコードがあるから、夕食の前にヘアメイクとネイルも頼んであるの。朔夜くんとまではいかなくても、今日もお姫様の魔法をかけてもらえるわよ?楽しみでしょ?」

『もしかしなくても、あたし今日ここに泊まるんですか?』

「今日だけじゃないわよ?」

『え?』

「ここに3泊して、場所を変えて3泊するから6泊ね」

『あの…あたし学校があるんですけど?』

「学校にはもう連絡してあるから大丈夫よ!なまえちゃんと一週間も一緒にいれるなんて楽しみだわ!」


なんかどっと疲れた気がする。
いきなり何かをしでかすのはこの夫婦の常だけど、今回は一体何があったって言うんだ。
とりあえず、今はマッサージでこの疲れを癒してもらうことにした。
有希子さん、学校帰りにいきなり車に乗せて連れてくとか、これ他の人がやったら拉致ですからね?


「なまえちゃん、今日のドレスはどれがいいかしら?あたし的にはブルーがオススメなんだけど」


マッサージが終わって部屋に行ってみたら、こんなだだっ広い部屋であたしにどう過ごせって言うんですか?っていう部屋にあたしのキャリーがポツンと置かれていた。
有希子さん、いつの間にあたしの荷物なんか準備したんですか。

そう思っていたら、有希子さんがドレスを持って部屋に入って来た。
有希子さんがオススメだと言うブルーのイブニングドレスはちょっと大人っぽいデザインの、でも可愛さも入った毎度のことながらなんとも絶妙なチョイスをしてくれてるドレスだった、けど。


『有希子さん、一体何着持って来たんですか?ここでは3泊っていうお話でしたよね?』


それよりも、ドッサリと持って来られたドレスの量の方に意識がいってしまった。
少なくとも10着はあるだろうこれは、デザインからして全部あたしのだ。
有希子さんが自分に似合わないのを着るはずがないし、若者向けなのは見れば分かる。
でも、そのどれ一つとして今まで着た衣装がないっていうのはどういうことですか?
あたしは新しく買わなくていいって毎回言ってますよね?


「だーって、なまえちゃんがせっかくドレスアップしてくれるのに、前と同じなんてつまらないじゃない!でも、ドレス見に行ったら可愛いのがいっぱいあって迷っちゃったから、結局全部買っちゃったのよねー」


てへ、って効果音がついてんじゃないかってくらいに可愛いらしく舌を出した有希子さんに、あたしはため息を吐くことしか出来なかった。
まぁ、これだけあれば向こうしばらく新しいドレスを買われることはないだろう。
それで全て片付けることにした。
有希子さんのやることを止めるだけのスキルはあたしにはないんだから、諦める他ない。


『これならブレスレットを外さずに済みそうですから、ブルーでいいですよ』

「なまえちゃんありがとうっ!でも、そのブレスあげてから、もう2年になるのに、まだ付けてくれてるのね?」

『当たり前じゃないですか。あたしの宝物なんですから』

「もうっ!なまえちゃんったら可愛いこと言ってくれるんだからっ!なまえちゃん大好きっ!!」


ホントですよ?
これはあの日もらったあたしの宝物なんです。
だから、肌身離さず付けてるし、手入れだって欠かしたことないんですから。

そんなことを有希子さんの腕の中で思ってた。



あたしは今でも、有希子さんたちの娘でいられることを幸せに思ってるんですから。



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