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02


有希子さんが買い物に出かけたのをきっかけにさっきの得体の知れない封筒の話を先生にしてみた。


「ふむ。それを見せてもらっても構わないかな?」
『はい、ええっと…これです』
「開けても構わないかい?」
『どうぞ』


封筒を開けて中のカードみたいなのを見ると、先生がドキッとするくらい素敵で不敵な笑みをした。
先生の普段の優しい笑顔も大好きだけど、こういう表情も渋くてホントにカッコイイ!!


「なまえ君、明日の夜は私とデートしよう」
『え?はい。喜んで』
「これは私が預かっておくよ」
『?はい』


あの封筒、何か意味があったのかな?
先生の瞳が推理してるときの新一みたいに楽しげに煌めいてる。


翌日も有希子さんが新一のご飯を作るから気にしないでデートして来て!って言われたので、お言葉に甘えて先生とのデートの為にオシャレをして出掛けていた。


『先生、今日はどこに連れて行ってくれるんですか?』
「その前にお客が来るからね。その人に会ってから食事に行こう」
『お客?』


意味がよく分からなかったけど、先生に着いて行くとそこは夜景の綺麗な素敵な場所だった。


「おや?招かれざる方がいらっしゃる様ですね」


バサリとマントを靡かせて、トンと降り立ったのは今世間を騒がせているあの怪盗キッド。
…こんなところで何してるんだ?


「何、君のお父上とは決着の付かないままに終わってしまったからね。うちの愚息と対決しているという二世の姿を一目見ておきたかったんだよ」

「それでは今日はお引き取り願えますか?私が用があるのはなまえ嬢ですので」

「残念だが、なまえ君はこれから私とデートの約束があるんだよ。これからの君の仕事の邪魔を私がしても構わないなら考えるがね。最も、お父上の真似事をしてるだけの未熟な君なら、次の現場で捕まえられる自信があるが…構わないかい?」


ワンコの時とは違う真剣な眼差し、相手を見透かし惑わす瞳、不敵な笑み。
やっぱりキッドはカッコイイと思う。

それより意外なのは挑発してるような口調で話してる挑戦的な態度の先生だ。
一体どうしたって言うんだろう?


「真似事?一体何を」
「君のラブレターは拝見させてもらったが、誘い文句が今一つだった。君のお父上は、もっと上手にやっていたがね」
「…」
「私は彼程大胆で狡猾な人間を他に知らない。まだまだ君は未熟者だ。まぁ、うちの愚息も未熟者だからこそ、いい勝負が出来るんだろうが、私と君とでは勝負にすらならないだろうね」
「…何がおっしゃりたいんですか?」
「今日予告を出していた現場に、予告通りに行けば分かるさ」
「…」
「ちなみに、なまえ君は君からの招待状を見てもいない。その程度の気配りも出来ない君にはなまえ君は渡せない、と言っているんだよ」
「そうですか…なまえ嬢への招待状はまた改めて出すとしましょう」


キッドはそのまま何処かへと消えてしまったんだけど、あたし一人だけ二人の話についていけなかった。
一体何の話をしてたんだろう?
ワンコが盗一さんに比べて未熟だってことしか内容が分からなかった。


『先生、さっきは何の話をしていたんですか?』
「なまえ君は気にしなくていいんだよ。さぁ、食事に行こうか?」
『?はい』


その後は先生といつもの用に楽しくお喋りをしながらのお食事を楽しんで、先生に送ってもらいながら帰ったんだけど、先生に一枚の封筒を渡された。


「彼が君の元に直接来ることがあったら、これを渡すといい」
『これは何ですか?』
「なまえ君を守る私からのお守り、と言ったところかな?」
『わかりました。有り難くいただきます』


封筒の意味はよく分からなかったけど、先生からのお守りなら効果は絶大だろうと封筒を大事に受け取って自分の部屋に入ると、閉めていたはずのベランダが開いてカーテンが揺らめいていた。


「なまえ嬢。お待ちしてましたよ」
『不法侵入で警察呼んでいいかな?』
「部屋には一歩も入っていませんのでご安心を」


そういう問題じゃない!
もうっ!ワンコの時は可愛いのに、キッドになると傲慢になるんじゃないか?こいつ!


『これ』
「なまえ嬢から私へのラブレター、ですか?」
『そんなわけないでしょ。私のお守りだって言ってた。何か言ったりしたりするつもりなら、それ見てからにしてくれない?』
「それでは拝見させていただきましょう」
『…』
「…」


封筒を開けた途端、確かにキッドを纏っていた空気が変わった。
ポーカーフェイスが一度崩れたせいかもしれない。



「どうやら今日は引き上げざるを得ないようですので、これで失礼します。なまえ嬢、またいずれ月夜の綺麗な日にお会いしましょう」


それだけ言うと、キッドはベランダから白い鳥となって消え去った。
お守りの効果は絶大だったけど、内容がすっごい気になる。



【完全なる敗北】

数日後の新聞では、キッドが予告した獲物に触ることも出来なかったと大きく報じていた。
何でも協力者に知恵を借りた所、キッドはいいように遊ばれた挙句、危うく捕まるところだったらしい。

協力者というのが先生だっていうのは分かるんだけど…先生、一体何をしたんですか?
と疑問が残るだけだった。

せめてあのお守りの封筒の中身だけでも知りたいなぁ…



→懺悔室(あとがき)

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