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『怪盗キッド、また予告状…ねぇ』
今日の朝刊にはキッドの予告状と、キッドのファンについての記事がデカデカと載っていた。
キッドがカッコイイのは分かるけど、あれが日常ではワンコだと知ってる身としては複雑だ。
何で同一人物なのにあそこまで印象が違うかな？
いや、だからこそ捕まらないんだろうけどさ。
そんなことを思いながら、学校へ行くと熱狂的キッドファンの園子がえらく騒いでた。
『蘭、園子のあれ一体どうしたのよ？』
「なんかね、キッドが女子高生を次のターゲットにしてるって噂が流れてるんだって」
『はぁ？怪盗が誘拐するの？』
「分かんないけど、今朝からあたしを拐って〜ってずっとあんな調子だよ？」
『あはは…』
もう空笑いしか出ない。
園子のそのセリフ、キッドが何かする度によく言ってるからもう聞き飽きたよ。
「キッドは宝石を主に盗んでんだ。人拐いなんかすっかよ」
『あ、新一。おはよー。今日は遅刻しなかったね？』
「昨日の夜中にいきなり父さんたちが帰って来やがったからな」
『え？ホントに！？帰りに新一の家行かなきゃ！』
「…なまえ、オメー、俺の彼女だって自覚あっか？」
『あるよ？ただ先生が帰ってるなら、早く会いたいなーって思って』
「まぁ、父さんたちもオメーに会いたがってたから喜ぶだろうけどな」
学校が終わって、新一は目暮警部に呼び出されたとかでどっかに飛んでったから、あたしもルンルン気分で先生たちに会うために工藤邸を目指していた。
「お姉ちゃーん、待ってー！」
『うん？』
どっかで子どもの声が聞こえた気がしたけど気のせいかな？
「お姉ちゃん、あのね、お姉ちゃんにこれ渡してって頼まれたの！」
スカートをくいくいと引っ張られて下を見ると小さな女のコがあたしを見上げて封筒を差し出していた。
『頼まれたって誰に頼まれたのかな？』
「知らないお兄ちゃん！」
女のコに視線を合わせる為にしゃがんだんだけど、無邪気な笑顔での返答にガクンと体勢が崩れるかと思った。
今時の子どもは知らない人からモノを貰うなって教わらないの？
親や教師は何をしてるんだ。
いや、この子の見た目的にまだ小学校上がってないんだろうけど。
『ありがとう。でも、知らない人からモノもらったりしたらダメだよ？』
「もらってないよ？あたし、お使いしたの！お姉ちゃん、じゃーね！」
女のコは走って行ってしまったけど、この得体の知れない封筒どうするかな？
って渡された封筒を見るとあたしの名前がフルネームで書いてあった。は？
『何？これ？』
開けずに捨てたいけど、自分の名前が書いてあるモノを無造作に捨てるのも抵抗がある。
先生の家ならシュレッダーくらいあるだろう。
それでさっさと処分させてもらおうと先生のお家へと向かった。
ピンポーン
「はーい。あら！なまえちゃんじゃない！久しぶりねっ！！」
『有希子さんたちが帰ってるって聞いたので急いで来ました』
「もうっ！なまえちゃん大好きっ！あたし、ずっと会いたかったのよ？」
『ゆ、有希子さん。とりあえず、中、入り、ましょう？』
興奮気味に抱きついて来た有希子さんはまだ想定内だ。いつものことだから。
でも、有希子さんが一言話す度に腕の力を強めるから、そろそろ息が出来なくなりそうなんですってば！
「そうね。優作もなまえちゃんに会いたがってたし、上がって上がって？」
『お邪魔します』
「もうっ！そんな他人の家に入るみたいな挨拶なんて要らないわよ！ずっと新ちゃんのご飯作ってくれてたんでしょう？久しぶりに帰って来たのに、家の中も綺麗だったし、あたしたちの部屋のシーツまで洗い立てでビックリしたもの」
『有希子さんたちがいつ帰って来てもいいように、そのくらいはやってて当然ですよ』
「なまえちゃん大好きっ！新ちゃんなんて第一声が何しに帰って来たんだよ？なんて言うのよ？ヒドイと思わない？」
『…新一には後であたしから説教しておきます』
「おや？賑やかになったと思ったらなまえ君が帰って来てたのか。おかえり、なまえ君」
『先生もおかえりなさい！』
少し腕を開いてあたしを誘ってくれた先生に、有希子さんの腕から抜け出して先生に抱きついた。
久しぶりの再会の時には、先生とのキスとハグの挨拶はいつものことだ。
(新一の目の前でやると機嫌が悪くなるから、今日はいなくて助かった！)
『昨日先生たちが帰ってることを教えてもらってたら、朝一番に会いに来たんですけど、新一に学校で聞くまで知らなかったので、遅くなってしまってすみません』
「なまえ君が気にすることはないさ。あいつは私たちになまえ君を取られるのが嫌だったんだろう。さぁ、珈琲を煎れるからみんなで飲もうじゃないか」
久しぶりに先生の珈琲で楽しいお茶会が始まった。
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