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01


「なぁ、なまえ、時間何とかして作れねぇか?少しでも構わねぇからさ!」
『だーから!その日は忙しいんだってさっきから言ってるでしょ!』


電話越しに何をそんなにイラついてるかって、ワンコがさっきからしつっこいから。
このワンコ、その日があたしの誕生日だって知ってか知らずか、どうしても譲れないんだってずっと食い下がって来てるのだ。


『あたし友だちと予定があるから11時には出かけるし、その後は別の予定が立て続けに入ってるから無理ね』
「じゃあ、その前!」
『はぁ?』
「その出かける前の一時間でいいから、俺に時間くれよ!頼む!な?」


…その前って、あたしに早起きして支度はさっさと済ませろってか?
のんびり支度させてくれたっていいじゃない!


「オメーに時間取らせねぇように、俺がなまえん家に行くから!」


さっきから必死に頼まれてるんだけど、ワンコが急にきゅーんって効果音でも付けたみたいに、それでもダメか?って聞いて来た。
あーもうっ!断りたいのに、耳が垂れた寂しげなワンコの幻影がっ!!


『…分かった』
「っし!じゃあ10時前にはそっちに着くように行くから、楽しみにしといてくれよ!」


一体何を楽しみにしろって言うんだ。
その日は園子の家でプチパーティーをしてくれるって言うから、その時間に遅れるわけにはいかないっていうのに。
ブツブツとワンコに対して文句を言いながらも、早起きしてオシャレを済ませたあたしってホントにワンコに甘いと思う。
だって、あのワンコ、ホントに幻影が見えるんだって!


ピンポーン


『はぁい…って、何?その荷物』
「まぁ、いいからいいから!」


ワンコは何か知らないが、大きなバッグを持って来ていた。
リビングでいそいそとカバンの中身をいじってるけど…こいつ、何しに来たわけ?


「こほん。じゃあ、始めるぜ?なまえの為だけの黒羽快斗のマジックショーだ!」
『え?』
「オメーに俺のマジックショーを見せてやるって言ってんだよ。なまえの誕生日の記念にな!」


ってワンコはシルクハットを被って、ホントにマジックショーを始めてしまった。
いや、確かにワンコのマジックショーなんて見たことないから見たいって言ってたけど、前に「わざわざ俺の文化祭まで待たなくてもとびっきりのマジックショーを見せてやるよ」って言ってたのってこのことだったの!?


それから小一時間、ワンコはずっと色んなマジックをしてくれた。
場所はあたしの家だから、前準備なんて何も出来なかったはずなのに…やっぱりキッド様は伊達じゃないらしい。


『凄いすごい!』
「なまえが喜んでくれんだったら、いっくらでもしてやりてぇけど、そろそろ時間だからな。最後のマジックはオメーにかけてやるよ」
『え?』


ワンコが「1、2、3!」って掛け声をかけるとあたしの左腕に何か冷たい感触があった。
あれ?不思議に思って左腕を見てみると、細いシルバーで細工されたキレイな色の石が散りばめられたあたし好みのブレスレットが着いていた。
いつの間に?


「俺のマジックショーはオメーの記憶に残すオマケのプレゼントだけど、そっちは記念に残る本物のプレゼントな!」
『あり、がと。…でも、何で快斗があたしの誕生日知ってたの?あたし、教えてないわよ?』
「それは企業秘密っつーことで」


何かすっごい気になる台詞を残して、ワンコは退場して行った。
企業秘密って何だ、企業秘密って。


『あ、ヤバイ!園子の家に行かなきゃ!』


ワンコの企業秘密発言が気になって少し呆けていたけど、急がないと約束の時間に遅れちゃう!


「なまえいらっしゃい」
『間に合った?』
「全然大丈夫よ。ほら、みんな来てるからあたしの部屋に行くわよ」


園子の部屋に行くと、色んな食べ物やケーキが準備されていた。
けど、あたしたち4人にこの量はちょっと多いんじゃない?


「じゃ、なまえも忙しいみたいだし、早速パーティー始めましょうか」


「「「なまえ(ちゃん)Happy Birthday!!」」」
『ありがとう!』


園子、蘭、明日香。
みんなに出会えたことが、親友になれたこと自体があたしにとってこれ以上ないプレゼントだよ。


「ホントは一日中でも騒いでたいんだけど、新一くんのおじ様たちと約束があるんじゃ仕方ないわよね」
『ホントごめんね?』
「何言ってるの!今日はなまえが主役なんだから、そんなこと気にしちゃダメだって!」
『ありがとう、蘭』
「はい、なまえちゃん!あたしからのBirthdayプレゼント!」
『ありがとう、明日香』


ずっとお喋りしながらご飯を食べてたんだけど、明日香がプレゼントをくれたのをきっかけに蘭と園子もあたしにプレゼントをくれた。

一人ずつプレゼントをもらっては抱き締めながら、嬉しさでちょっぴり涙が出てきた。


『みんな、これからもよろしくね?』
「何泣いてんのよ!当ったり前じゃない!」
『3人と過ごせる時間全部が、あたしの最高の宝物だよ』


次の予定が入ってたから、15時にはお開きになったけど、たくさんの写真を撮ったり、お喋りしたり女同士の楽しい時間を過ごしていた。





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