01
『ねぇ、蘭。今日はどっちが夕食作る?』
「ごめん!今日部活が終わるの遅くなるからお姉ちゃんに頼んでもいいかな?コナン君もお父さんもお腹空かせちゃうと思うし」
『OK。部活頑張んなよ?試合近いんでしょ?』
「うん、そうなの!絶対勝つから!お姉ちゃんありがとう!」
あたしの名前は毛利なまえ。
一緒に登校してるのは双子の妹の蘭。
本当なら、ここにもう一人幼なじみの新一がいるはずなんだけど、ちょっと訳アリで今はいない。
変わりに今一緒に暮らしてる小学生とその友だちの群れが目の前にいるけど。
「じゃあ今日はサッカーしようぜ」
「コナン君そればっかり。今日は皆でゲームしようよ!」
「それいいな。じゃあ今日はコナン家に集合な」
「おい、オメーら勝手に決めんなって!」
小学生相手に負けるのか。
まぁ、新一はなんだかんだ言って面倒見がいいから、甘えられるって意味で頼られるんだろうな。
そう、何がどうなったのか詳しくは知らない
けど、新一は今は小学生になってしまっている。
どうせ厄介な事件に首突っ込んだ結果だと思うけど、コナンって名前だけはどうにかならなかったのかしら?
『歩美、うちに来るんならクッキーか何か焼こうか?』
「ホント?なまえお姉さん、ありがとう!」
『この前約束したもんね』
「じゃあやっぱり今日はコナン君の家で決まりですね」
「ったく…」
コナンが余計なことすんなよって視線を向けて来たけど、ムシした。
蘭が心配しないように(ついでに変な事件に巻き込まれないように)その体のこと黙ってるんだから、大人しく小学生してろっての。
『みんなー、クッキー焼けたから休憩にしない?ジュースも持って来たからさ』
「やっと出来たのかよ?待ちくたびれて俺腹ペコだぜ」
「ありがとうございます!」
「これ美味しい!コナン君いいなぁー。なまえお姉さんも蘭お姉さんも料理上手なんだもん」
「あはは…」
『ほら、コナンはこっちのクッキーね』
「ありがと。なまえ姉ちゃん」
子供用に甘くしたクッキーじゃ、新一には甘過ぎて食べられないだろうから、新一の分は甘さ控え目。
飲み物までジュースで甘いし。
歩美たちにバレないようにみんな別々の皿に盛って来たし、大丈夫だろう。
そんな日常を繰り返してたある日、夜中にコナンがこっそりと家を出て行くのを見つけた。
ったく、また事件でもあったっていうの?
しょうがないな。
『すみません!前のスケボーで走ってる男の子追って下さい!』
「え?」
『早くっ!弟が親とケンカしちゃってこんな夜遅いのに家飛び出して行っちゃったんです!』
「わ、分かりました!」
博士の発明だか何だか知らないけど、あのスケボーを追うのは車じゃないと難しいからタクシーを拾った。
ったく、博士が余計なもん作るから新一が毎回無茶するんじゃない。
『すみませんここでいいです。ありがとうございました』
新一を見失った倉庫街で車を降りる。
ドラマとかなら、いかにも何か怪しいことやってますって雰囲気だけど…
バキュン
銃声!?
嘘でしょ!?
でも確かに聞こえた。あっちだ!
あたしは、考えるよりも先に銃声が聞こえた方へと走り出していた。
頼むから新一無事で居てよっ!
「っつ…」
いたっ!
でも足を怪我してる。
あれじゃいくらすばしっこい新一でも逃げ切れないじゃないっ!
「オメー何で此処にいんだよ!?」
『いいから動かないで!』
「バーロー!離せっ!じゃねぇとなまえが」
『絶対離さない!新一が怪我する方があたしはイヤなの!』
銃声の中飛び出して新一を抱き締めて庇ったのはいいものの、上から狙われてるから死角になるような場所がないここじゃ…どこか死角になるような場所に連れて行かないと新一がっ!
バキュンバキュン
『っ!』
「なまえ!いいから俺を離して逃げろっ!」
『ぜ、ったいに、離さない』
ヤバいな。
あたしも足打たれちゃった。
一発は頭かすっただけだから大丈夫だけどこのままじゃ…
何とかして新一だけでも助けたいのにっ!
キィイイイッ
あたしの願いが通じたのか、車が凄いスピードで走ってきて、あたしたちの盾になってくれた。
盾になってくれたってことは、味方、だよね?
「早く乗って!」
『コナンをお願いします!』
「なまえっ!」
『いいから先に乗りなさい!』
助手席から手を伸ばして来たジョディ先生に暴れるコナンを預けて、あたしも足を引きずりながら何とか後部座席に入った。
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