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優しい時間を貴方と 01


『有希子さん、これってやり過ぎじゃありません?』


ただ今、有希子さんがあたしに出張ヘアメイクをやって下さっています。
が、どう見てもどこぞの夜のパーティーにでも行けるような完璧フルメイクにしか見えない。
いや、可愛いんだけど。すっごく!


「何言ってるの、なまえちゃん。女のコはいつでもお姫様なのよ!」
『でも、あたし今日どこ行くかも聞いてないですよ?服とかまで用意していただいてなんか申し訳ないです…』
「あら、服も靴もバッグもあたしじゃなくて優作が買って来たのよ?」
『…』


ホントにこの夫婦はあたしを甘やかし過ぎだと思うのですが。
有希子さんたちに娘がいたら、毎日こんな感じで至れり尽くせりなんだろうか?
……絶対世間知らずなお嬢様になるな。


『じゃあそろそろあたし出かけますね。ありがとうございました』
「いいのよ。気にしなくて。それより今度はあたしとデートしましょうね」
『はい。行ってきます』


とは言ったものの、季節の代わり目になると(あたしの!)次のシーズンの服とかを大量買いされてしまうので、それは避けていただけると良心も傷まず済むんだけどなぁ…なんて思いつつ、それはもう諦めつつある今日この頃。
うん、だって有希子さんに勝てるパワーがないんだから、どうしようも出来ないんだよホント。


『はぁ…』


と、晴れやかな天気に似合わないため息をついていたら、いないはずの人たちとばったりと出会ってしまった。


「なまえちゃんやん!」
『え?』
「やっぱりなまえちゃんや!どないしたん!?そんなオシャレして!」
『和葉ちゃん!何で東京におるん?』
「平次んとこのおばちゃんの代わりに来てんけど、今回はあんまり時間ないからなまえちゃんに会えへんなぁって連絡せんかったんよ」
『そうなんや?でもこんなとこで会えるなんて奇遇やね』
「ちょっと!平次も何か言うたりーな」
「…ホンマになまえなんか?」
『なんや、平次はうちがちょっと化粧と髪型変えたくらいで分からんくなるん?』
「や…せやけど、変わり過ぎちゃうか?」
『そんなことないで。そりゃあ普段はここまですることないけど、たまにはええやん?それとも似合わへん?』
「なまえちゃん、めっちゃ可愛いて!」
「いや、可愛いしキレイやで?せやけど…」
『けど、何よ?』
「何や知らん人見てる気ぃするわ」
『ちょ、失礼ちゃう!?和葉ちゃんしばいたって!』
「任しとき!」
「ちょっ、和葉待てや!」
『ほな、うち時間あるからそろそろ行くわー。また今度一緒に遊ぼな』
「なまえちゃん、また大阪遊びに来てな!」
『うん!』


和葉ちゃんに平次が「いつまでやったらおのれは気が済むんじゃ!」とかキレてたけど、知らんぷり。
だってあんなこと言う平次が悪いねんもん。
和葉ちゃんは可愛い言うてくれたのに、うちそんなに分からへん程変わってるか?
和葉ちゃんはすぐうちやって気付いてくれたし、そんなことないと思うんやけど…。
なんて、考え事をしながら歩いていたら、ぽんと肩を叩かれて振り向いた。


「よう!今日はえらく可愛いじゃねーか!」
『快斗!こんなとこで何してるの?』
「青子と待ち合わせしてたんだけど、なまえが通るのが見えたからこっち来たんだよ」
『…青子怒るよ?』
「大丈ー夫だって。あいつなまえの名前出したら怒んなくなっから」
『そうなの?』
「そーなの。んじゃまぁ、キレイなお姫様に、1.2.3ー!」


ぽんって音と共に頭に何だか違和感を感じた。


『快斗何したの?』
「鏡持ってねぇか?」
『あるけど…わぁ、可愛いティアラ!』
「お姫様にはやっぱりティアラがないとな!」
『快斗ってホントにいつもワクワクするマジックしてくれるよね!』
「だろ?ま、なまえの為ならいつでも飽きるくらいマジック見せてやるよ」
『クスクス。快斗ったらまた調子のいいこと言ってー』
「ホントだって!」


まだ時間に余裕があったから快斗としばらく話してたんだけど、まさかここで更なる乱入者が登場するとは思っても見なかった。






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