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そのポジションが欲しいんです


あたしはただ今化粧台の前で格闘中。
え?何でかって?
今日がデートだからに決まってるじゃない!

昨日3時間程悩んで決めた服、化粧も含めて髪をいじっていたら2時間が過ぎていた。
あー、ホントに早起きして良かったぁー!

待ち合わせの場所に向かっていたら、ちょっと離れた場所に見知った顔を見つけた。
けど、何をしてるのか知らないが、隠れてるみたいだったから見なかったことにする。


『先生ー!お待たせして申し訳ありません!』
「いやいや、私も今来たところなんだ。それにしても…」
『はい?何ですか?』
「今日のなまえ君は一段と可愛いね。独り占めに出来るとは嬉しい限りだ」


そう言って先生はあたしを軽くバグして、おでこに軽く接吻をした。
こんなことをして似合う日本人がいるだなんて!


『せ、先生とのデートだから気合い入れて来たんですよ!』


少し熱が集まってきた頬を気にしないことにして、先生に今日は何処に連れて行ってもらえるんですか?と聞けば、着いてからのお楽しみだよ。なんて悪戯な笑みを返された。
もう、ホントに先生には勝てる気がしない。


「それより、今日はせっかくのデートなんだから、先生呼びは辞めないかい?」
『それじゃあ…優作さん、で良いですか?』
「私としては呼び捨てでも構わないが…まぁ、そんなことよりそろそろ出かけるとしよう」


少し右腕を上げた先生に、迷わず自分の腕を絡ませた。
嬉しくて笑顔になったんだけど、鋭い視線を感じて後ろを振り返る。


「どうかしたのかい?」
『いえ…なんか視線を感じて』
「きっとなまえ君が可愛いからだよ。さぁ、そんなことは気にせず、デートに行こうじゃないか」
『はい!』


先生が気にしなくていいって言うなら、たぶんその程度の事なんだろうと思って、ちょっと先生の腕に抱きついて頬をさすってみた。
これをすると先生は必ずあたしの頭を撫でてくれるから。

それから水族館に行って、はしゃいで、今はブレイクタイムのカフェでの一時。
なんだけど…


『優作さん、ちょっと耳貸してもらえますか?』
「ん?何だい?」
『あのですね、息子さんがずっと後を付けて来てるみたいなんですけど』
「ああ、なまえ君も気付いていたのか」


なまえ君と私が何処へ行くのか知りたいなんて息子も可愛いやつだろう?なんて楽しそうに笑っていらっしゃる優作先生。
先生、ホントに工藤くんで遊ぶの好きですね……。
これヘタしたらストーカー騒ぎになりますよ?
とか考えながらガトーショコラを食べていたら、先生の手が伸びて来た。
え?何?


「なまえ君、ケーキがついてるよ」


なんてあたしの唇の端を拭って、ぱくっと食べてしまった優作先生…
これじゃあホントに彼氏じゃないですか、とあたしの顔は暮れ往く夕日に負けないくらい真っ赤に染まった。

何してくれるんだ、ホント……。
でも嫌な気分にならないのは相手が先生だからに違いない。
先生の傍にいるのはほっと出来て嬉しいから、


『もうちょっと一緒にいたいです』


なんて、送るからそろそろ帰ろうと言った先生の服の裾をそっと掴んでしまった。


『あ…。何でもないです!さぁ、帰りましょう!』


何とか誤魔化そうと手を振って話題を変えようとしたけど、こんな子ども騙しが先生に通じるわけもなく、


「それじゃあ夕食は我が家で食べて行くといい。有希子も喜ぶだろうしね」
『…いいんですか?迷惑ならあたし帰りますよ?』
「迷惑だなんてとんでもない。もう少し君の時間を頂けるかな?なまえ君」
『はい!』


自分の発言のせいで先生を困らせちゃったんじゃないかと不安だったけど、先生の優しい笑顔に重かったキモチは何処かへ行ってしまってあたしも自然と笑顔になった。

また優作先生の腕に抱きつきながら、先生の家へと向かってたんだけど、あたしはすっかり工藤くんの存在を忘れていた。


「夕食が済んだら送っていくが、今回のデートはここまでだからね」


と玄関先で先生に頬にキスされて、慌てたように工藤君が出てくるまでは。



【そのポジションが欲しいんです】

「何だよ!父さんとのデートっていつも今日みたいなことしてんのかよ!?」
『く、工藤くん落ち着いて。中に入ったら話聞くから、とりあえず玄関先で叫ぶのは辞て!』
「新一、男の嫉妬は見苦しいぞ?」
『嫉妬?』
「だぁああああ!父さん余計なこと言うなよ!みょうじ、何でもないからな!?」
『え?あ、うん。ところでさ』
「な、何だよ」
『あたしいつになったら入れてもらえるの?』
「あ…」



→あとがき



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