「工藤先生。お話が盛り上がってるとこ悪いけど、なまえちゃん、もう帰らなきゃいけない時間じゃないのかな?っていうか、うちも閉店時間だしね」
あー、もうそんな時間なんだ。
途中で珈琲のおかわりまでいただいたし。
…って、閉店!?
慌てて店内の時計を見ると、針は20時43分を指していた。
『嘘?!もうこんな時間!?』
「なまえちゃん、帰りは工藤先生に送ってもらいなね。ご両親に怒られるのはこの先生でいいから」
『あ、いや、あたし一人暮らししてるので怒られるとかはないんですけど…』
さすが世界屈指の小説家、工藤優作。
話術半端ないな。
この人相手だと一日中でも話のネタ尽きそうにないから怖いよ。
とか思ってると、工藤先生もマスターもなんだか暗い顔をしていた。何でだ?
「それじゃあ、なまえ君、帰ろうか。夜道は危ないから送っていくよ」
『ありがとうございます』
「今度はうちに食事しにおいで。代金は全部工藤先生がまとめて払ってくれるから、今まで通り気軽に遊びにくるといいよ」
『いや、自分の分くらい自分で払』
「もう支払いは済んでいるから、行こうか。なまえ君」
『はい!?』
お財布を出そうとしたらいつの間にか工藤先生が払ってくれていたらしい。
悪いから払うって言っても聞いてくれないし…。
それに、なんか二人に気を使わせちゃった感があるんだけど、何が原因だ?
夜道、工藤先生に送ってもらいながら、何故か連絡先の交換をした。
何かあったらいつでも頼るといいって。
なんだか優しいパパが出来たみたいで、嬉しいけど面映ゆかったのは内緒の話。
「今度、うちの家族と一緒に食事でもどうだい?」
『嬉しいですけど、工藤くんと友だちになってから誘っていただけますか?話したこともないクラスメートと食事なんて気まずいだけでしょうし』
「息子のことなら気にしなくて」
『全力で気にします!』
「…それならあいつに頑張るように言うかな?」
『工藤君にあたしのこと言ったら、もう工藤先生と会いませんから』
「!?」
にっこり笑顔で言ったら、工藤先生がダメージ受けてた!
やった!今日初めて勝った気がする!!
あれ?なんか趣旨が変わってる?
そんなこんなで何故か工藤先生と仲良くなってしまいました。
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