いつも一人で帰ってるから、誰かと一緒なんてなんか不思議な感じ。
あ、でも先生にはたまに送ってもらってるか。
「でね、その時蘭がね」
『へぇ、そうなんだ?』
ただ今、あたしの家に向かいながら、蘭と工藤くんの昔話を聞いていたりする。
こういうアニメや漫画じゃ分からないことを聞けるっていうのはトリップの利点だと思う。
いや、トリップ自体がファンには嬉しいことだろうけど。
何たって生でキャラが見られるんだもん!
『あ、ここがあたしが住んでるマンションだよ』
「へぇー。なんか一人暮らし用みたい」
『みたいじゃなくて、一人暮らし用よ』
「は?」
『だって、あたし一人暮らししてるから』
「えええええ!!?」
『どうしたの?置いて行くよ?』
「え?あ、うん?」
何だか知らないが絶叫してた園子に声をかけて、マンションのエントランスに入る。
あたしがトリップしてきて驚いた一つにこのマンションがあったりする。
部屋がまんまに見えるとか思って外に出たら驚いた。
だって景色は全然知らない場所なのに、マンションはそのままだったんだもん。
マンションごとトリップしたんじゃないかとか疑ったくらいだけど、管理人さんは違う人になっていた。
どうやら、あたしの部屋とマンションの外観が前に使ってたものに似てるってだけらしい。
「それにしてもなまえが一人暮らししてたなんて初耳だわ」
『まだ言ってるの?』
「だってそういう話あんたしたことないじゃない」
『だって聞かれなかったし?』
「なまえってよくそれ言うわよね。あんた聞かれなかったら何も喋らないわけ?」
『そんなんじゃないけど、自分のこと話すより話を聞いてる方が好きだからさ』
「ふぅん?」
園子に珈琲とお菓子を準備して、あたしは泊まるための準備をしている。
と言っても一泊だからそんなに荷物があるわけじゃない。
後は鞄の中身を明日の授業用に変えたらおしまいだ。
「なぁーんか、あたしってなまえのこと何にも知らないのよね。よし、今日はとことん色んなこと聞いてやるんだから!」
忘れ物がないか確認していたあたしは園子の寂しそうな呟きも決意も一切聞いていなかった。
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