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これからお茶でもしようかという話になっている時、有希子さんの携帯に先生から電話がかかってきた。


「新ちゃんが遊びに行ったから、三人でお茶しましょうって優作もこっちに向かって来てるんですって」

『…先生、お仕事大丈夫なんですか?』

「締め切りよりなまえちゃんとのデートの方が大事みたい」

『いや、そこはお仕事優先しましょうよ!』


先生何やってんですか!

と心の中で叫んでいたら、先生と合流した。


「いつものなまえ君も可愛いが、休日のなまえ君は本当に美人になるね」

『先生、お世辞はいいのでお仕事に戻って下さい』

「本当のことを言ってるだけさ。それに仕事は帰ってからでも出来るからね」

『それで締め切りに間に合わなかったらどうするんですか?』

「待ってもらえばそのうち出来るよ」


さも悪びれもなくあっさりと言い切った先生。
…編集担当者の皆様、ご愁傷様です。


「それより、買い物は楽しかったかい?」

『先生っていうストッパーがなかったので、有希子さんが暴走して大変でしたよ』


あはははは、と軽快に笑う優作先生。

ちなみに、ただ今、有希子さんは友だちを見つけたとかで席を立っています。


『それにこんなにたくさん買ってもらっちゃって…先生に申し訳ないです』

「そんなことなまえ君が気にする必要はないさ。それは私と有希子からのほんのキモチだからね」

『でも…』

「うん?」

『こんなによくしてもらっても、あたしどうやって先生にお返ししていいか分からないです。普段も先生のご好意に甘えちゃってるのに…』


泣きそうになったあたしを見て、先生は大きな手で優しくあたしの頭を撫でてくれた。


「そんなことは気にしなくていいんだよ。誰かを好きに思うキモチは見返りを求める行為じゃないだろう?」

『それは分かってますけど…』

「なまえ君は前に私の娘としてのポジションは捨てがたいと言っていたね?それなら娘として受け取ってくれないかい?我が家は娘を甘やかす主義なんだ」

『愛情いっぱいに育ててもらったら、きっとあたしみたいに性格がひねくれることもないですよ』

「なまえ君みたいにまっすぐで優しいキモチを持った娘に育ってくれると嬉しいな」


なんだか噛み合わない会話をしながら、あたしは一生懸命涙を流すまいと我慢していた。

先生の優しさはいつもあたしにはあったか過ぎて、涙腺が緩んでしまうからいけない。

泣きそうになりながらも、先生のそんなキモチが嬉しくてあたしは精一杯の笑顔で返した。



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