『うわぁ!この髪型可愛い!』
「だろ?なまえちゃんなら自分でも出来ると思うよ」
『はい!今度チャレンジしてみます!』
髪を切ってもらってる間に聞いたんだけど、望月さんは有希子さんが現役だった時代に知り合ったらしい。
まだ当時は見習いの駆け出しだったらしいけど、今では人気のヘアデザイナーさんなんだって。
そんなすごい人紹介されても困る!
って思ってたんだけど、気さくな人で話してるうちにいつの間にか仲良くなってしまっていた。
で、髪を切ってもらって、綺麗にいじってもらった髪に感動して冒頭に戻る。
「はい、これ俺の名刺」
『ありがとうございます』
「またいつでもおいでよ」
反射的に名刺を受け取ってしまったら、笑顔でそんなことを言われた。
いや、無理だって!
人気ヘアデザイナーな望月さんに今回切ってもらえただけでも光栄だってのに!
「君の髪は俺がデザインしたいんだ。いいよね?」
なんて髪を少し掬いとられて上目遣いにキメられてしまったから顔に熱が集中して何も言えなくなってしまった。
よくそんな台詞恥ずかしげもなく言えるなこの人…いや、だからこそ人気なのか?
腕は文句のつけようがないし、挙句カッコイイとかもう詐欺だって!
「有希ちゃんもまたおいでよ」
「次は私も綺麗にしてね?」
「もちろん!」
なんて有希子さんと望月さんが言葉を交わしてるのを聞きながら、ありがとうございましたと望月さんの部屋を後にした。
『いきなりマンションに行くからびっくりしましたよ』
「だって朔夜くんもなまえちゃんに会いたいって言ってたし、いい機会かなぁ〜って思って」
おい!あたしの話してたんかい!
え?あたし有希子ネットワークで有名になってたりしないよね?大丈夫だよね?
「でも朔夜くんもなまえちゃんのこと気にいったみたいね」
『え?』
「最後にもらった名刺あるでしょ?あれって彼が気にいった人にしかあげないものなのよ。プライベートで貴方の髪を切りますよって意味なの」
そんな重大な名刺をあたしは反射的に受け取っちゃったと!?
数分前のあたし、何故全力で断らなかった!!
でも、望月さんに切ってもらった髪が気に入ってしまったのは確かなので、あたしは何も言えなくなってしまった。
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