誰に話しかけられても笑顔で対応していたみょうじが、俺に対しては軽く(だと思いたい)拒絶するような態度だった。
やっぱ、河野泣かせちまったことでまだ怒ってんのか?
やべぇ、どうしたら許してもらえんだ?
謝ったらあっさり許してくれるんじゃないかと思ってたから、これは予想外だった。
どうすっかなぁ。
と頭をがしがし掻きながら考えたけど、全くいい案は思い付かなかった。
――
―――…
――――…
結局昨日小説を一気読みして、軽く寝不足なあたし。
あたし、続きもんの小説一回読み出すと止まらないんだよなぁ。
本当にしまった。
もう昨日は失敗ばかりだ。
欠伸を噛み殺してると蘭が心配そうに話しかけてきた。
「なまえどうしたの?なんか眠たそうだけど」
『んゅー…昨日現実逃避に本読み出したら止まらなくなっちゃってさぁ。んで結局朝まで読んじゃってたんだよねぇ』
「もしかして寝てないの!?」
『うみゅ。徹夜ー』
もう欠伸を噛み殺すことも出来ずに、大きく欠伸をして目を擦る。
ヤバイ、マジ眠い。
これは次の授業寝るな、確実に。
「なぁ…」
『蘭、旦那さん迎えに来たよー』
「え、ちょっ、違っ」
「新一?どうしたの?」
「あ、いや俺は、」
『あたし眠いから痴話喧嘩ならあっちでやってね。あたしもう寝るから』
「え?」
なんか納得してない工藤くんを蘭が連れ去ってくれた。
それを眺めて、もう無理ーと意識をあっさり手放した。
「で、新一。何の用だったの?」
「いや、俺はみょうじに用があっただけでオメーに用があったわけじゃ」
「なまえに?新一、なまえと仲良かったっけ?」
「いや、違ぇけど…。ちょっとあいつ怒らせちまってさ」
「なまえを怒らせたぁ?!新一、一体なまえに何したのよ!?」
「オメーには関係ねぇだろ!」
「関係あるに決まってんじゃない!なまえはあたしの友だちなんだから!」
「だから!もう一回謝ろうとしてたんだっつってんだろ!?」
「もう一回?」
「あ、やべっ…」
「一回謝っても許してもらえないなんて相当なまえの逆鱗に触れるようなことしたのね。なまえって基本的に何でも一回謝ってもらったら許しちゃうのに」
「え?マジ?」
やべぇ…俺、もう許してもらえねぇ?
机に突っ伏してすやすやと気持ちよさそうに眠るみょうじを、俺はただただ眺めることしか出来なかった。
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