目の前には困ったような仕草をしている工藤新一。
もうこいつ可愛いなぁ!
じゃなくって!!
『用件はそれだけ?あたしそろそろ帰りたいんだけど、帰っていい?』
「あ…あぁ」
『それじゃあ、また明日ね』
工藤くんとはそんなに仲良くしてるわけじゃないから、これで対応は間違ってない、はず。
二人きりになんてなったことないから(明日香の時は勢いだけがムダにあったので省く)心臓が爆走してて、思考が回らないんだけど。
何か自信ないなぁ…。
「なぁ、一つだけ聞いていいか?」
『…何?』
歩き出したあたしの背中に、工藤くんが声をかけてきた。
何?
あたし帰らせてもらえないの?!
「もしかして、今日残ってたのって、此処で俺を見てた、とか?」
『え?あたしは本を読んでただけだけど…どうして?』
バ レ た!?
ちょっと待って!なんで?とか聞かれたらあたし説明に困るんだけど!
「あ、いや、その…部活の途中で目があった気がしたからさ。勘違いだったみてぇだな。悪ぃ」
『ううん。きっとグラウンドからだと距離があるから、何かと見間違えたんだよ』
この言い訳苦しいか!?
でも、他に何も思い付かないんだ!これで逃げさせてくれ。
じゃあね。
と言って後ろの工藤くんを放置して、逃げるように教室を出ていく。
やばいヤバイ。
イケメン観察がバレるとこだった。
こりゃしばらくサッカーしてる工藤くんは拝めないなぁ。
なんて考えながら、帰路を辿る。
サッカーしてる工藤くんって、カッコよくてきらっきらしてて見てて楽しかったんだけどなぁ。
なんてため息が漏れる。
仕方ない、自分の失態だ。
諦めるしかない。
授業中と休憩時間のイケメン観察だけで我慢しよう。
落ちたテンションを上げる為にも、今日はひたすら小説読み更けようっと。
てか工藤くんは何でサッカーしてる最中に教室見上げたんだ?
ちなみに、そんなあたしと同じく、あたしの態度でまだあたしが怒ってると勘違いした工藤くんが実は結構ヘコんでるなんてことは、あたしは知るよしもなかった。
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