(番外編)新一side
試合の支度をして家を出ようとしたら、今日はやけに母さんのテンションが高かった。
父さんに話を聞いてみると、今日はこの後客が来るんだとかで、俺には関係ないことだと思って、そそくさと家から逃げ出した。
あんなにテンションの高い母さんの相手をしてるだけで、精神的にヤられるのは目に見えてるからな。
避難出来るならしておくに越したことはない。
今日が試合でホントに良かったぜ。
…と思ってたのに。
試合から帰ってきてみれば、朝よりも断然に機嫌のいい母さんがいて俺の頬が勝手に引くついてるのが分かった。
「新ちゃん!おかえりなさーい!!」
「うわっ!何だよ!いきなり!!」
「あのね、今日優ちゃんの可愛いファンの子が遊びに来てたんだけどね。ホントに可愛い子だったのよ〜!」
「わーったから!話ちゃんと聞いてやっから、とりあえず離してくれって!俺試合後で疲れてんだからよ」
なんとか母さんを引き剥がすことに成功したけど、まだ攻撃は終わっていなかったらしい。
「でね、その子が差し入れにってケーキ持ってきてくれたの!新ちゃんも食べるでしょ?」
「ん、貰うけど。とりあえず俺シャワー浴びてくるわ」
母さんのテンションが高ぇのはいつものことだけど、今日のはそれを軽く越えてる気がする。
父さんに話を聞いてみると、どうやら母さんのファンでもあったみたいで、終始あんな調子だったらしい。
誰だか知らないが、被害にあったヤツに心から同情する。
「ん!これうめぇな!」
「でっしょ〜?あたしのファンの子からの手作りケーキなの」
「彼女は私のファンだけどね」
なんつーどうでもいいことで張り合ってんだ、この夫婦は。
思わず苦笑いが漏れてため息まで出たけど、ケーキをもう一口食って気力を回復させようとした。
「そうだ。新一、そのファンの女の子はお前と同級生らしいぞ」
「はぁ?」
「一緒に食事でもと思っているんだが、お前が不甲斐ないばかりに私も有希子もまだ食事に誘えなくてね」
「ちょっと待てよ!何でそこで俺が出てくるんだよ!」
「彼女が話したこともない自分がいたら、新一に悪いと頑ななんだ」
「はぁ?!」
「ってことで新ちゃん早く仲良くなってね!」
「だーからっ!ちょっと待てって!俺は関係ねぇだろ!?ってかそいつ誰だよ!?」
「私たちの口からは言えないから自分で探すんだな」
「あんまり新ちゃんがのんびりしてると、あたしたちだけで食事に誘っちゃうんだから!」
頭痛てぇ…
一体誰だよ!?
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