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食後の珈琲タイムには問題の手作りシフォンが添えられていた。

こんな大物夫婦にあたしの手作りケーキなんか食べさせて大丈夫なんだろうか。

さっきからあたしは不安で仕方ない。


「あら?このケーキ美味しい!なまえちゃん、これどこで買ったの?」


先生はその発言を聞いて、自慢気に話し出した。


「有希子、これはなまえ君の手作りだよ」

「え?嘘!?ホントに?!」

『お口にあったなら良かったです』


あたしもやっと胸を撫で下ろして、珈琲を一口含む。

お世辞かもしれないけど、不味いと言われるより断然いい。


『先生はどうですか?お口にあいます?』

「とても美味しいよ」

『良かったです』


先生の笑顔を見て、あたしも自然と笑顔になる。

あたし、本当に先生になついちゃったな。


「クスクス。なんか優作となまえちゃん本当の親子みたいね」

『それ、さっきの先生の言葉と同じですね』


なんて言って、有希子さんと二人で見つめたまま笑いあった。


『でも、先生に仲良くしてもらえて、お父さんがいたらこんな感じなのかなぁって思ってたんです。
きっと先生みたいに素敵なお父さんなんて、どんなに探してもなかなかいないと思いますけど』


笑顔で言った台詞なのに、なんだか空気がちょっと変わった。あれ?


「やっぱりなまえちゃん、うちにお嫁に来ればいいのよ!」

『それには息子さんにあたしを認識してもらうところから始めないとダメですね』


変な空気になったと思ったけど、有希子さんの明るい言葉に安心してまた笑った。

だって、たぶん工藤くんはあたしというクラスメートがいることさえ知らないと思うから。

夕食も一緒に食べて行けばいいのに、という有希子さんを先生の時と同じように受け流して、たくさんの本を借りて工藤邸を後にした。

普通の家族ってどういうのか分からないけど、きっと今日みたいな日が続く家庭が幸せな家族なんだろうな。

なんてまたくすぐったいキモチになった。

泡沫の夢でも、今はこの幸せだけで十分だと素直に思えた一日。


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