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「なぁ、この髪どうやってるんだ?」

『え?』


食事が終わって工藤くんの部屋で本を読んでたら、工藤くんがあたしの髪で遊び出した。
ちょ、近いから!


「普段はストレートだろ?ちょっと毛先の方は緩くウェーブかかってっけど」

『あれはくせ毛なの』

「あれも似合ってるけど、これってすげー手間かかってそうだろ?」

『そうでもないよ?髪を巻いて形を整えるだけだから』

「ふーん」


自分で聞いてきたクセに、何かな?その薄い反応は。
ってかいつまであたしの髪で遊んでるつもりなんだ。


「なぁ…」

『何?』

「何で今日はこんなオシャレしてんだ?軽くだけど、化粧もしてるよな?」


あたしの顔を覗き込んできた工藤くんのまっすぐで澄んだ瞳と視線が交わった時、心臓が不自然なくらい大きくドクンと跳ねた、気がする。


あたしは工藤くんのこの瞳に弱い。

これから力強さを増していくだろう、この瞳の破壊力は今から恐ろしいくらいだ。
今だってこんなに心臓に悪いのに!


『今日は有希子さんと出かける用事があったからだよ』

「母さん?」


予想外の答えだったのか、工藤くんがきょとんと瞳を丸くして指に絡ませて遊んでいた髪がするりと指から滑り落ちた。


『うん。だって有希子さんあんな美人さんなんだよ?多少でも綺麗にしとかなきゃ失礼ってもんじゃない』

「そういうもんか?」

『工藤くんは男の子だから分からないかもしれないけど、美人の隣に並ぶのって結構勇気いるんだから』


分かってくれようとしてるのか、うーんと唸っていた工藤くんはちょっと質問を変えてきた。


「じゃあ、父さんと出かける時は?」

『え?有希子さんがいない時なら、普段と変わらないと思うけど?』


先生と会うのって基本的に学校帰りの喫茶店だから。


「そっか!」


なんて、至近距離から破壊力抜群の爽やかキラキラスマイルであたしの心臓を騒がせておいて、本人は何事もなかったかのように本を読み出した。

一体なんだったんだ?
と不思議に思いながらも、視界に入った時計にそろそろ荷物を片付けなきゃと、読みかけの本を持ってそっと工藤くんの部屋を後にした。



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