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いつも通り、ゆっくりと広いお風呂に入らせてもらって、気分的にもルンルンだった時、先生から声を掛けられた。
これはチャンスかもしれない!


「なまえ君、珈琲はいかがかな?」

『はい。いただきます』


始めはいつもみたいに雑談をしてたんだけど、今言わなきゃいつ言うんだよ!って自分に活をいれて先生に向き直る。


『先生、一つワガママを言ってもいいですか?』

「うん?急に改まってどうしたんだい?」

『イヤならイヤで断って頂いて構わないんですが…』

「なんだい?」

『先生と二人でお出かけに行ってみたいなぁ…って』

「……」

『先生?やっぱりダメ、ですか?』

「いや、すまない。なまえ君からそんな嬉しい申し出があるとは思ってなかったからね。ビックリしてしまったんだ」

『それって…?』

「もちろんいいとも!」

『本当ですか!?』

「あぁ。当たり前じゃないか」

『それじゃあ、今抱えてる締め切り前の原稿、全部終わらせちゃって下さいね!』

「なまえ君?」

『先生とのデート、楽しみにしてますから!』


うまく作戦が成功したようで、満面の笑みを先生に向けたら、仕方ないなぁと諦めたように先生は頭をがしがしとかいていた。

うん。これって息子さんにもちゃっかりと伝染しちゃってるクセですよね。


次にお風呂に入る工藤くんに声をかけて、先ほどの成果を伝える為に、有希子さんたちの部屋へと向かった。


『有希子さん、なまえですけど…』

「鍵掛かってないから、そのまま入って来て大丈夫よー」

『それじゃあ、失礼します』


どうやら有希子さんは就寝前の肌のお手入れの最中だったらしい。
あれを怠ると大変なんだよなぁ…と少し前の自分を思い出していた。


「それで?優ちゃんなんて言ってた?」

『多分大丈夫だと思いますが、念の為に明日もう一押ししておきますね』

「ごめんなさいね。なまえちゃんにこんなこと頼んじゃって」

『気にしないで下さい。あたしも気になってたことですから』


それじゃあ、明日楽しみにしてますね。

と有希子さんたちの部屋の扉を閉めて、工藤くんから借りた小説が待っている自分の部屋へと帰った。



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