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「有希子さん、今日の夕飯は何ですか?あたしは何をしたらいいんでしょう?」


いつものようにエプロンを着けながら(慣れって怖いな。もうこのエプロンに抵抗を感じなくなっちゃったよ)有希子さんにいつもと同じ質問をしたのだけれど、


「なまえちゃん、今日はあたし一人で大丈夫だから、本の続きでも読んできたら?」

『でも…』

「そんな顔しないで?毎食なまえちゃんが手伝ってくれてたから、あたしも助かってたんだから!」

『……』

「あ、そうだ!だったらこうしましょう?今日はあたしが作るからなまえちゃんは後片付けをお願い。ね?」

『分かりました。じゃあお言葉に甘えて…』

「うんうん。いってらっしゃーい!」


明らかに今日の有希子さんは様子がおかしい。
先生に聞いたら理由が分かるんだろうけど、今日に限って先生は仕事部屋に隠ってしまっている。

差し入れの珈琲はさっき持って行ってしまったし、真面目に仕事をしている先生の邪魔をするのは忍びない。

ということで、あたしに残された選択肢は静かに本を読むことだけだった。

しばらく本の世界に没頭してたんだけれど、ようやく最後のシリーズのラスト一冊を読み終わって、大きく伸びをした。


『んーっ。さて、と。そろそろ有希子さんの準備も終わってる頃だろうし、食器並べるの手伝いに行こうかな』


本棚に本を返していると背を向けている扉が開く音が響いた。


『あ、先生。仕事一段落ついたんです…か…って工藤くん!?』

「みょうじ!?何でオメーが此処に…ってか俺ん家にいんだよ?」

『工藤くんこそ、サッカー部の合宿だったんじゃないの?』

「え?確かに合宿には行ってたけど。つーか合宿帰りだし」

『嘘っ!?有希子さんに聞いた話じゃ明明後日に帰って来るって…あれ?』

「母さんがそう言ってたのか?」

『うん。10日間の合宿だって』

「1週間の合宿だっつって説明のプリントも渡したはずなんだけど…?」

『……』

「…母さん、今台所か?」

『うん。工藤くん、あたしも行くわ』


有希子さん、絶対、夕飯の量で工藤くんが帰ってくるのがバレないように、あたしをキッチンから追い出したんだ。

で、先生もぐるってわけか。
へぇー。工藤くんが帰って来るのを秘密にしてた理由って何なのかしら?
故意に間違った合宿の日程教えるまでして……。

今日はあの二人許さないんだから!!



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