【別に工藤くんが嫌いになったとかじゃないよ?ただ、あの日嵌められたのが悔しかっただけ。意地悪してごめんね?】
……ってオイ。
俺が河野使ってみょうじ呼び出したって理由だけで、ずっと避けられてたのかよ!?
【でも、ああいうことされるよりは、普通に話かけてくれた方が嬉しいな。というわけで、仲直り記念にお菓子をプレゼント。許してくれるかな?】
もう普通に話しかけてもいいのか…なんてこれだけで安心して許しちまうとか俺って案外単純なのか?
とりあえずラッピングされた袋を開けて、菓子を食おうとしたら母さんがひょっこりと顔を出した。
なんか嫌な予感がすんだけど。
「新ちゃん、それどうしたの?」
「あ、これはみょうじが…」
「なまえちゃんの手作り!?新ちゃん、あたしにも頂戴!」
やっぱり!
これは俺が貰った分だっての!!
誰がやるかと自分の部屋に避難して食ってから下に降りたら母さんがすっげー不機嫌だった。
…ガキかよ。
「新ちゃん、お母さんお客様呼ぶからどっか出かけてきて」
「は?」
「しばらく帰って来なくていいから!っていうか、お願いだからゆっくりしてきてね!」
「ちょ、おい。待てって!」
「いい?くれぐれもゆーっくりしてくるのよ?」
「母さん!」
あり得ねぇー…
息子を無理矢理追い出して鍵までかけちまいやがった。あの母親一体何考えてんだ!
ったく、みょうじの菓子ぐれぇでんなに機嫌悪くすんなよな。
とりあえず蘭のとこに行って一頻り愚痴って日も暮れてきたし、そろそろ母さんの機嫌も直っただろうと思って家に帰って玄関を開けたらみょうじがいた。
は?
みょうじも俺にビックリしたみてーで、目を丸くしてたけど、みょうじが何か言おうとしたら、父さんが送ってくからとみょうじを連れ出して
「あ、ちょ…」
手を伸ばしてみたけど、あっさりと玄関の扉は閉まってしまった。
んだよ、俺が送るっつった時は逃げたクセに父さんに送られるのはいいってーのかよ!?
父さんとみょうじが仲がいいのは知ってっけど、何か腑に落ちねぇ。
「ねぇねぇ、新ちゃんが言ってた合宿っていつ?何泊くらいするの?」
俺を追い出した時とは打って変わって楽しそうな母さんに余計腹が立った。
ったく、気分屋過ぎんだよ!
「7月27日から1週間だけど?」
「ホントに?やったー!新ちゃん大好きー!!」
「はぁ?」
歌を口ずさみながら台所に消えた母さんに疑問しか浮かばねぇ。
何だ?
俺が合宿に行くと何かいいことでもあんのかよ?
まぁいいか。
母さんの機嫌がいいに越したことねーし。
それより、とりあえず明日みょうじと一緒に帰れねぇか誘ってみっか。
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