宝モノ

誘拐されてしまった。

ある島に寄って買い物をしていたら山賊に誘拐されて山に連れて行かれた。

「なかなか可愛い娘だな、海賊にしとくのは勿体無い」
「…」
「逃げたいのか?まぁ手を縄で縛ってるし逃げられないだろう」

能力者だったらこんな縄なんか切ってコイツらをボコボコに出来るのに。

「お前、名前は?」
「…あなたのなまえ」
「あなたのなまえか…何処の海賊団だ?」
「…」
「答えろ!」
「…バギー海賊団よ」
「知らないな」

まぁそうだろうね。

あの卑怯で逃げ腰のバギーのことだから私のことなんて助けに来るわけない。
何よりお宝が一番好きな人だもんね。
私なんて痛い思いして取り返すほどの者じゃないし。

だとしたらもういっそ山賊になろうかな。

「ねぇ、おじさん?私、逃げないから縄外してくれない?」
「逃げないなんて保障何処にもないだろ?」
「…おじさんが縄になれば?」

言ったことを後悔した。山賊は私にベッタリとくっついている。まるで恋人の様に。

暑苦しい。清潔感も無いむさ苦しい男達。
ああ…あの青くて綺麗な髪の毛と真っ赤な鼻が恋しい。

それに比べてコイツらは私を見てニヤニヤして、気持ち悪い。



ついに今日が終わる。
バギーは来なかった。来るわけないと諦めていたのに心の何処かで期待していた様だ。


床に布を敷き、その上に寝転がると隣に誘拐の主犯の男が寝転がった。

「あなたのなまえ、お前は良い金稼ぎになれる」
「…体を売るってこと?」
「まぁ、そうだ」
「…」
「なぁに、心配するな、金だけ貰って後は逃げれば良い」
「…そう」

私がそう言うと男は私の上に股がってきて、私の両手首を片手で押さえ付けた。

「お前の体は俺が買う」
「…あなたが買える体だと思ってるの?」
「んだと?何の抵抗も出来ないくせに…買ってやるんだ、有り難く思えよ」

そう言うと男は私のシャツを引きちぎり、首すじに顔を埋めてきた。
男の舌が私の首にまとわりつく。

こんな男に犯されるくらいなら死んでしまいたい。

涙が零れ落ちる。
バギー…あなたに私の体を、初めてを捧げるのが夢でした。











「おいこら、そこのハデアホ山賊野郎…」


「何だ?」

声のする方を見るとバギーが居た。

「バギー…何で此処に?」
「お前の海賊団の一人か、ハハハ!お前、コイツ…あなたのなまえは俺がいただいた!いろんな意味でな」

その言葉を聞いたバギーの様子がおかしい。

「…テメェ、いい加減あなたのなまえから離れろ」
「は?何だって?聞こえねーなー!」
「その汚い手であなたのなまえに触んなって言ってんだよ!!」
「フッ、そうか、あんた…コイツがそんなに大切か?」

男はそう言って座っている私の肩をなで回した。

「…だから汚い手で触んなって言ってんだろ?ハデアホがっ!」

バギーは男の前まで走り、そのまま男を殴り飛ばした。

「っぐはぁ!」
「あなたのなまえ、大丈夫か…って服が!」
「…」

服が破けている私の姿を見て驚いた後、バギーは自分の上着を脱いで私に羽織らせた。

「っくそ、海賊がナメやがって!」

男は立ち上がり、剣を出してバギーに襲いかかった。

「うぉりゃあ!死ねェ!」
「ぎゃはははは!俺はバラバラ人間だから効かねェよ!」
「なっ、能力者か?!」
「くらえ、マギー玉!!」

バギーが足からマギー玉を打つと見事に山賊に当たって爆発した。

「よし!あなたのなまえ、今のうちに逃げるぞ」
「うん…っ」

バギーに手を引かれながら船に向かう。

「あなたのなまえ、痛いとこねェか?」
「…うん」
「そりゃあよかったぜ」
「助けになんか来ないと思ってた…」
「助けるに決まってるだろ!」
「お宝の為にしか動かないかと思った」
「失礼だなァ!…まぁ間違ってはないけどよォ」

来てくれて嬉しいんだけど素直になれない。男に触られた汚い体を、手を、バギーは躊躇いもなく握ってくれる。
嬉しいけどツラい。
バギーに守ってもらうほどの価値が私に有るのだろうか。


「何で来てくれたの?宝でもあった?」
「宝か…うん、宝だな」
「え?…何処に?」
「ここに」

そう言ってバギーは私を指差した。

「…え?」
「宝はあなたのなまえ、おめェだ」

歩いていた足を止め真っ直ぐに向かい合う。

「バギー…?」
「っとに、無事で良かったァ!」
「…ありがとう」
「あなたのなまえは俺にとってその…宝、だからよ」
「私が…?」
「あぁ、そうだ」
「…バギーが゛あなたのなまえに汚い手で触るな゛って言ってくれたの、嬉しかった」
「腹が立ってな…俺も触ったこと無いのに…って、そうじゃなくてな!えっと…つまり、俺はなァ…あなたのなまえ、おめェが好きだ!」
「…」
「…っ」
「…」
「…っな、何か言えよ!!」
「私…本当はあいつじゃくてバギーに初めてを捧げたかった」
「はっ、初めてェ?!」

私の言葉にバギーの顔は真っ赤になった。
大胆すぎたかな?

「それくらいバギーが好きだってことだよ…っ!」

言い終わると同時にバギーに抱き締められた。

「馬鹿野郎…ハデに好きだっ!」






私にとっての宝もあなたなのかもしれない









(初めて、俺にくれんだよなァ?)
(そのつもりだよ)
(じゃあさっき山賊が触ったとこの消毒も兼ねて…あなたのなまえの初めて頂きまーす!)
(え?!ここでっ?!)



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