アカデミー【新しい友達】




授業が終わりのチャイムを告げるとヒナは走ってサクラのいる教室へと向かった。

またいなくなっては大変だ。


教室の前まで着くとサクラの後ろ姿を見つけ、ホッと胸を撫で下ろす。



「サクラー!」


「あ、ヒナ!」



ヒナの声にこちらを振り向くと、サクラは少し困った顔をしていた。



「サクラ、帰ろう?」


「あ…ご、ごめんね。今日は…」


サクラの反応を見て、昨日のことを思い出した。


「そっか、いのちゃんって子と公園で約束してたんだっけ」


「そ、そうなの。だから、今日は…」


サクラは申し訳なさそうに、もじもじしている。
きっと自分から言いづらいのだろう。


「…うん、わかった!今日は先に帰るね」


「ごめんね…明日は、一緒に帰ろうね」


また明日、と大きく手を振るサクラを見送って、自分もアカデミーの出口へ向かう。
サクラ、嬉しそうだったな。
途中であいつらに絡まれなければいいけど。



「…あれ、今日はサクラと帰んねーの?」


「あ、えーっと…シカマルくん!」


アカデミーを出ると、いつも一緒にいるシカマル君とチョウジ君がいた。
前は同じクラスだったが、挨拶程度しか喋ったことがない。
いつもサクラと一緒にいることは知られていたようだ。


「今日は、他の子と約束があるみたいで」


「お前も一緒に行けばいいじゃねーか」


「え、だってほら。私は、知らない子だし…?」


「…ふーん」


この時シカマルは思った。


女ってめんどくせーのな、と。



「じゃあ、僕たちと遊ぶ?これからキバとナルトと僕たちでかくれんぼするんだけど」


ポテチをムシャムシャと頬張りながら、ヒナをかくれんぼに誘うチョウジ。
それにはシカマルも頷いた。


「…いいの?」


「男ばかりでよければいーぜ。人数いた方が楽しいしな」


「じゃ、じゃあ、行こうかな」


「よし、決定だね。公園まで行こう」



チョウジとシカマルに続き、ヒナも後を追う。

公園に着くと、既にキバとナルトがシカマル達を待っていた。



「あれ、なんでヒナがいるんだ?」


「ヒナもかくれんぼ入れてあげてよ」


「一人で寂しそうに帰ってたからよ、誘った」


「寂しそうって…失礼な」


「ヒナ!久しぶりだってばよ!んじゃさっそく、かくれんぼ忍者バージョンやろーぜー!」


キバやナルトも前は同じクラスだったため、既に顔見知り。
ナルトとはアカデミー入学時に初めて話したということもあり、それなりに仲は良かった。



あれ、でも…


かくれんぼって…




「…かくれんぼって、どうやるの?」


「「「「……は?」」」」


4人揃って驚いた顔でこちらを見る。


幼い頃から父と修行ばかりしていたから、こういう遊びを知らない。
知る機会がなかった。

サクラともよく遊んではいたが、日に弱い私の身体を気遣って家で遊ぶことが多かった。
今日も日差しは強いが、フードの付いた服のおかげでさほど気にすることではない。



「ヒナってば、かくれんぼ知らないのか…?」


「ご、ごめん。こんな大人数で遊ぶのって初めてで…」


彼らにとっては当たり前の遊びを知らないとは。
なんだか恥ずかしい。


「んじゃまず、説明からだな」


キバが簡単にかくれんぼのルールを教えてくれる。
意外と簡単そうだ。
しかも、忍者バージョンときた。やらない訳にはいかない。


「よーし、鬼決めっぞー!!」


ナルトが気合いを入れてじゃんけんのポーズをとる。



鬼…かぁ







―鬼の子。







「鬼、私がやってみてもいい?」


「鬼をやりたがるなんて、珍しいってばよ…」


「んま、やってもらえるならありがたくお願いするぜ」


「じゃあヒナが鬼ね。20秒数えたら、みんなを探しに来るんだよ」


「わかった…!」



こうして、5人のかくれんぼは始まった。






***






日が沈む頃、4人は遊び疲れて横たわっていた。
その隣で余裕そうに目を輝かせて立つヒナ。


かくれんぼ以外にも
鬼ごっこ、缶蹴り、忍者ごっこなど、色んな遊びを教えてもらった。



「あーー!!つっかれたー!」


「えーーもう?」


「ヒナってば…全部鬼だったのに…なんでそんな元気なんだってばよ…」


「さすがの俺も限界だぜ…」


「ぼ、僕も…」


横たわる4人のなか、未だ元気そうなヒナはまだ遊び足りないようだ。
しかしもう日は沈みかけ、明るかった公園は夕日に照らされている。


「俺、そろそろ帰らねーと、帰りに買い物頼まれてるんだった。母ちゃんに怒られる」


「じゃあ僕も付き合うよ、シカマル」


「んじゃ今日はここまでにすっか!かいさーん!!」


「なんでキバが仕切るんだってばよー!」


もう帰る時間なのかぁ
今日は初めて体を思いっきり動かす遊びをして、本当に楽しかった。

誘ってくれたシカマル達に感謝しないと。



「あ、あのさ…今日は誘ってくれて…あ、ありがとう」



照れくさくなって、俯く。
サクラ以外の人と遊ぶのも初めてだったし、なによりそんなに親しくもない自分を受け入れてくれて、彼らはすごく優しい人たちだと思う。



「ヒナさえよければ、また遊ぼうぜ」


キバ君がニカっと笑う。
君は犬みたいに足が速くて大変だったよ。


「おう!久しぶりに楽しかったってばよー!」


いつものメンバーにマンネリ化してたらしい。
嬉しそうに大きく手を振るナルト。


「次はポテチヒナの分も持ってくるね」


またポテチ食べてる。
ありがとう、チョウジ君。


「今度は俺にも鬼やらせてくれよ」


実は鬼、やりたかったらしい。
不服そうなシカマル君。



みんな私に手を振ってくれる。
今日で、友達になれた気がする。
彼らは言葉にしなくても、そう言ってるような気がした。



「私も暗くなる前に帰らないと」



みんなとは逆方向に歩いていく。
その足は久しぶりに軽かった。

サクラは無事に帰れたかな

そんなことを思いながら、家へと向かった。







prev next

[back]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -