02



iDカードは飾りで終わらず、脱出成功の願掛けを兼ねてささやかな復讐を準備する。運を味方につけた名前にもはや敵なし、カードを使って見知らぬ研究室に侵入した、作業に没頭する研究員は恍惚と眺める顕微鏡に映る小さな対象物以外眼中にない、好都合だ。
ラベルを貼られ整列する皆目見当つかないサンプルを詰め込めるだけポケットに移す。もしやこの部屋に誰かが入室したということすら気づいていないのか、心の中で笑ってやって名前は部屋を去った。


―――そして外の世界へ。


『ここで降ろしてくださいっ…!』


―――周辺に軍事基地はありませんか?
行先に運転手は振り返って名前を見てしまった。周辺にはないが行けないことはない、と言う。代金は払えるのか?と聞かれた名前は『はい』と二つ返事を返した。無論一文無し。
見覚えがあると確信を持てる建物の外観が見えてくると停車させて門に駆け寄った。門番は銃を突きつけ威嚇、彼女に制止を呼びかける、ついでに乗り逃げされたら困ると運転手も名前を追いかける。

『これをクリスとジルと言う名前の人に渡してほしいんです…!』

ポケットに手を入れれば撃たれると思ってあらかじめ握り締めておいたサンプルを見せた。
門番はよく知る名前に顔を見合わせるも銃は下ろさない、名前は両手を上げて無防備であることを示しゆっくりと進む。


『これを二人に――――』


心労祟って倒れた名前の記憶は病棟のベッドでの目覚めに繋がる。


くねり動いた三本の指は大人しく1つにまとまって舌の根本に張り付いた、大人しかろうとなかろうと、問題は十分な長さで名前の喉を刺激して吐き出せない異物に永遠と嘔吐かせること。
顔を背けたくても髪を引き上げ痛みで固定され、ビュービュー鳴いて、顎からでろでろ粘液を垂らして泣いて、引き抜くために男の手首を掴んで訴えたけど、その酷く一方的な有り様、端から見た光景は彼女が好んで彼の指を咥えているようだ。

「苦しいなぁ…?吐けば楽になるぞ?」

隠したのではなく渡したと言えばどんな目に遇わされるだろう。名前はこの部屋に入ってから一度もウェスカーの目を直視できていなかった、鍵のない容易に開く扉、隣から聞こえる本来あるべきの医者と患者の会話、叫べば、暴れれば確実に来てくれるであろう助け。これ以上ない状況下で思考を行動に移せない原因は言うまでもなく殺意を帯びた男の慧眼だった、その視線は見えない手となり着々と名前を縊らせようとしていた。無論、名前は感じたことのない狂気に、自分が蝕まれていようとは思いもしなかったが。
やがてだらしなく半開きになっていた口から男の指はずるりと抜かれて、すとんと落ちた人差し指はパジャマの第一ボタンに掛けられた。

『やめて―――っ!?』

―――ガンッ!!

身の危険を感じるも頭を打ち付けられた名前は痛みに悶える。

「…死にかけたお前に新しい命を与えてやった」

引っ張られたボタンは糸も容易く服から弾け飛び、指は第二ボタンへ下がる。

「使い捨てにもなれなかった役立たずを拾ってやったのは誰だ?これほどの優遇はいかなるB.O.W.も受けたことはないというのに…」

三、四…はらりとはだけたブラジャーに括れた柔肌、抵抗するも彼女の両手は絡め取られて頭の上、

「…それなのにこの仕打ちはなんだ?」
止まらぬ指先は引っ掻くようにへそをなぞりまだ下へ、全てのボタンが外れた後もなお下がる。名前は大きく跳ね上がった。

『…ッッ、お願い、やめてっ……』

パジャマズボンの緩いゴムの、さらに一枚奥にある操にとっての最後の砦に指が掛かった、するりと侵入した指の背は滑り巨大な蛞蝓のように這って、薄い茂みをかき分け、ゆっくりと弧をなぞり進む。

「どこへ隠した…?」

『やめてっ…』

「吐けば止めてやる」

『―――――ひっ…!?』

背を向けていた指が表に返ろうとした。

『―――もうないっ!どこにもないっ…!!』

「………」

裏返るほどに名前は振り絞って叫んだ、どうしようもなく、後引く底無しの恐怖に名前は子供のように泣き出した。
一間置いてウェスカーはゆるりと指を抜き、髪を掴む手は頬を撫でる手に変わる。

「お前は俺の対応に不満があったらしいからな。至極の持て成しをしよう。処分は取り止めてウロボロスが完成次第ふるいに掛けてやる」

☆中途半端ですがおしまい☆


なんか長いだけでなー…
ってな感じになりまして、ボツになりました。
最後くらいはちょっとウェスカーさんデレてもいいんじゃない?思考に変わりあっちが完成しました。
iDカード使いたかった…(´・ω・`)

全28ページ

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