05

…うなされる。

何かが爆発して、火事から逃げだして、見つけたヘリコプターに助けてもらおうとして………、そのあとなぜか倒れたような…。…倒れた?本当に…?よく思い出せない。

――――――――

『………』

酷い喉の渇きを感じて名前は目覚める。そして天井を見てふと違和感、ここは自分の部屋じゃない。


『!』

さらに目で見渡すと、見知らぬ男が横で椅子に掛けて自分を見下ろしているではないか。軍人のような格好をして、それも冗談で武装しているのではないと思った名前は咄嗟に逃げようとするも、電撃が走るように痛んだ左手に声もなく顔を歪めた。

目覚めに気づいてくれた彼は神妙な面持ちで何か言いたげだったが、なにも言わない。
ならばと、名前は自分から問いかけようとしたが、今度は声が掠れて出てこない。

『(…み…、ず……)』

それでもまず一番伝えなければならないことは相手に理解してもらえたらしく、彼はカンティーンを取り出すと、噎せないように名前の首をほんの少し起こさせ、支えながら水分を口元に運んでくれた。


「気をつけて」

力を借りて名前は一口含んだが、結局上手く飲めずに噎せて痛みに悶絶する。
とにかく痛い、わかるのはそれだけ。その他のことについて、彼女は自分の身に起きたことを一切把握できていなかった。


『(何かあったんですか…?)』

また掠れた声でなんとか呼びかける。すると彼の顔つきの怖さが一気に増した。

「…俺が君を撃ってしまった」

『』

「……申し訳ない。じきにヘリが来る」


――撃った…?はてさてどうしたものか、軍人に撃たれるような悪さをした記憶はないし、街にはそれなりにいい病院があったはずだ。ヘリで運ぶような距離じゃない。そもそも名前には撃たれた実感がなく、混乱は深まるばかり。湧き上がるのは怒りよりもむしろ疑問だ。

『(…ここはどこですか?)』

「街外れのモーテルだよ」

『(!。ここ…病院じゃないんですか…?)』

「わかってくれ、あそこはとても使える状況じゃなかったんだ」

『(……?)』

「…君も見ただろ?」

―――何を…?
まだ寝ぼけている頭が、知らない方が幸せなことを思い出そうとし始めた。彼はきっと本物の軍人。記憶に怯える名前の心は、なかったことにしようと拒む。

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