森の深くに棲む男
森の深くに棲む男
何時でも何時もひとりぼっち
生まれた時から森にいたから
言葉も解らないし
自分の名前すら知らなかった
伸ばしっ放しの髪や髭
村人はおろか
動物達でさえ
気味悪がって近付かない
森の深くに棲む男
ある日一人の女の子に出会った
深い森に迷い込んで
ずっとしくしくしく泣いていた
見た事もないくらいかわいい女の子
ちっちゃくって
温かくって
男は女の子と暮らし始めた
お腹が空いたら食べて
眠くなったら寝て
言葉も少しづつだけれど教えてもらった
幸せだった
大好きだった
初めて男に殺意が芽生えた
何時か出て行ってしまうかもしれないから
自分の事など忘れてしまうかもしれないから
男は唯々
女の子が大好きだった
ドコニモイカナイデ
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