揺曳

強く強く願っていたのは他でもない僕自身で、唯唯君は頷いてばかりだった。
君の細く脆い手から零れ落ちていた砂を受け止められなかったのも受け止めようとしなかったのも他でもない僕自身で、唯唯君は無表情に眺めていた。
その瞳を見詰める事さえも出来なくて、息苦しさに拳を握りしめていた。
走り出したのは僕。立ち上がらなかったのは君。
何故何故何故何故何故、只管頭の中を深く迄苛む様に巡るのは疑問符。
息を吐けば後ろに君が立ち尽くす恐怖。
喩えば美しく斑な夕日をカメラに収めようとして現像された夕日の汚らわしさに落胆する様に、結局はインスタント。高感度一眼レフの清らかさは僕と君には最初から無かった。
何処で間違え踏み外し道を逸れ迷い込んだのだろう。
手探りに決して解決等有り得はしなかったのに。其れすら判らなかった。
余りにも無知過ぎた闇雲に暗中模索をし過ぎていた。
捕らえる事も逃がす事も虜にも醒ます事さえも唯唯恐くて、二人見て見ぬ振りをして互いに欺いていた。
相手を見ようとしていなかったのに、似過ぎていて依存する程居心地が良かった。



最初から、無理な話だったんだ。


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